《MUMEI》
止まらないキス…、とまらない想い
■洸(あきら)Side■






よく聞く話。


ナンパした女がそのまま家に住みついちゃったとか。

付き合ってる女が気がつけば家に住みついちゃって、親が女の分まで弁当作って学校に送りだすとか。




あんまり感心しない。そんないい加減な女。そしてそんな女に夢中になる男も、男の親も女の親も。


まさか自分の親は少なくともそんな親じゃないと思っていた。

弟もそんな男じゃないと思っていた。

なのにまさか弟の部屋に恋人がワガモノ顔で住みつくなんて。


お袋がそいつの分まで弁当用意して学校に送りだしたり…

揚句には雨の日、うちの親父は弟とそいつを車で学校に迎えにまで行って仲良く笑いながら帰ってきたり。




―――俺には全く理解出来ない。






「兄貴お帰り」

「ただいま」

残業から疲れて帰ってきた俺を風呂あがりの一哉が出迎えてくれた。

無地のスエットに濡れた髪。片手には缶ビール。


「飯は?」
「あー、会社で出前取ってくれたから」
「そっか、お袋に言っとくから風呂入っちゃえば」

「ああ、そうする」

ぱたぱたぱた


「お帰りなさい洸さん」


階段から降りてくる、最近住みつきだした人物。

弟と色違いのスエットに身を包み、弟と同じく髪が濡れている。


「………」


口を利く気にもなれず俺は奴を睨んだ後、風呂場に向かった。


ちょっと戸惑った弟と寂しい気に俯くそいつ。



俺は今日も気がつかないふりを決め込んで。



――とにかく気にいらない。

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