《MUMEI》

酒井さんの携帯電話を、勝手に見た鈴木は

女友達とのメールで、俺とキスした事を知ったんだって…

それで、俺のアドレスを消せって…

俺と怪しいって…前から疑われてたんだって

俺があげた、スマホを使ってるのも気に入らなかったみたいで…

床に投げつけられたんだって…

壊れたスマホを、カバンから取り出して見せて
そう話した、酒井さん

俺、運転しながら、その壊れたスマホを受け取り

コンソールにしまったんだ
……ごめ…
またぁ!………

酒井さんが謝ろうとしたから、そう言ったんだ

酒井さんが好きだと言った音楽を、大音量でかけながら
高速道路を走ったんだ

会話はなかった…
……話しても、聞こえないボリュームで
音楽が流れてるしね

その、アルバムが終わる頃には、高速道路から降りて、山道を走ってたんだ

のどかな風景が拡がってた
………静かになった車内で
…どこに行くの?

そう、聞かれたから

ん……わかんない…
けど、景色良いから、いいじゃん

笑顔でそう言ったら
酒井さん、笑ってたんだ

まだ、水の張られてない田んぼの中の道を走らせてた
アスファルトだけど…道が悪かった

そして、景色の良い、開けた場所の路肩に車を止めたんだ

鳥のさえずりが聞こえてた
たまに、農家の人の軽トラが走ってく…

……鈴木と、別れてよ

そう、切り出した俺に

別れたいって言ったよ…嫌だって言われた…

酒井さん、そう答えたんだ
また、静かな車内になった
………痛む?

俺に、そい聞いた酒井さんに

………痛いよ…
キスしてくれたら、我慢できる

そう、言ったんだ

……………酒井さんが、俺の唇の傷に、キスしてくれた

俺は、そのまま、酒井さんの唇を求め、舌を入れ
そして、スカートの中に手を伸ばしたんだ

酒井さん、抵抗しなかった
………俺、下着の上から少し触っただけで、止めたんだ…

唇も離し…

………鈴木の、女なの?

そう聞いたんだ

……違うよ…もう、別れるって言ったもん…

………身勝手なの、わかってるけど…
…琢磨が好き…

好きなの……
…もう、この気持ち、止まらないよ…

………信じて、いいの?

……信じて…欲しい…

…最後に、鈴木と寝たの、いつ?

えっ?………

……話せない?

…ううん……

アイツと喧嘩して、琢磨と、カラオケに行った、何日か後…
…でも、途中で止めちゃった…

………何でとは、聞かなかった
たぶん、生でしようとして、とかのメールの頃の話だと、思ったから

今の話を、良く取れば
俺と仲良くなって、俺を意識したから………とも、取れるしね…

…………バージンは?あいつと?

そう聞くと

ちょっとビックリした顔を見せたんだ…

…ごめん……聞いちゃいけない事だよね…

ふぅ……嫉妬深くなってるな………参ったな…

そう、言って、遠くを見たんだ

………嫌だよね…
同じクラスの人と、エッチしてた女なんて…

………そんなのは…別に……ただ、意識しないって言えるほど、大人じゃないよ
……………自分だって、中村としてたんでしょ…

……うん……

…私も気にしちゃうょ…
聞いてもいい?

酒井さん、そう言ったんだ

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