《MUMEI》
出会い 美鈴 side
『3番線に○○方面行きの電車が参ります。黄色い線の内側でお待ち下さい』


今日も憂鬱な1日が始まる。


だけど、私の憂鬱という言葉は

彼によってかき消されてしまう。


毎朝同じ車両に乗るキミ。

金髪で長身のカッコ良い彼と出会ってから……



私、園田美鈴(17)は

家を出るのがたまたま遅れて

いつもより1つ遅い電車に乗った。


この時間の電車は知らない人ばっかだなぁ〜…。

なんて呑気に思いながら空いていた座席に座った。


8時45分の電車だからか、

学生も少なくて車内はすいていた。


私の学校は最寄り駅から5つ目の駅にあって

駅から徒歩で約3分の所にある。


15分間暇だな〜…

電車の中って何もすることないし。

無意味に携帯いじんのも充電がもったいないし。



そーいえば今日の授業、嫌いな体育があった…。

あ〜最悪!!

バスケの練習試合なんだよね…。


なんて電車の中で1人憂鬱になっていると

1つ目の停車駅に止まった。



『――ドアが閉まります。ご注意下さい』


というアナウンスと共に、

誰かが私の向かい側の座席にドカッ、とダルそうに座った。

うつ向いていた私の視界に
その人のものと思われる足が見えた。

外の景色を見る振りをして顔を上げてその人を見た。


ドキッ…



私は一瞬でこの気持ちが何を意味しているかを理解してしまった。


ドキドキとうるさい心臓を無視して

再び目の前の彼をチラ見してしまった。


金髪だ……なのに髪サラサラだ…。

窓からの直射日光で更に輝いて見える無造作な金髪。

切れ長の鋭い目に奥二重、整えられた眉。

綺麗な形の唇に整った鼻。


うわ〜、イケメンさんだなぁ…。

学校でモテモテなんだろーなぁ…。


なんて心の中で彼を褒める私。


どうしちゃったんだろう…。

相手のお方に失礼ですが……


金髪でいかにも悪そうな人に

一目惚れだなんて。

前の私なら絶対に好まないタイプなのに。


彼は黒のスマホをいじりながら眠そうにしていた。


長袖のカッターシャツを肘下まで折り曲げていて、そこから見える腕は薄く血管が浮き出ている。


下げパンしてるのに足も長いし……


って私、確実に変態じゃん!!!!

初対面の相手を上から下まで見るとか

失礼に値するよ!!!!


なんて考えてると

『――○○、○○駅です』


私の下降駅に着いた。

アナウンスと同時に立ち上がる。

不意に彼を見るとパチッ、と目が合った。


ドキッ!!


ひゃあー!!!?目が合ったぁあ!!!!


ドキドキしすぎて真っ赤であろう顔をうつ向かせて電車を降りた。


駅から学校までの3分の道のりは彼の事だけ考えていた。

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