《MUMEI》

「はい。ありがとうございます」

彼は一つ頷《うなず》くと、

「キアン。引き続き相手をしてやってくれ」

「う、うん……」

「いつでもいいよ、キアンちゃん」

いいわけないだろ! 勝手に身体が動き出すわ喋り出すわで混乱してんのに、訓練再開? この状態で? 自殺行為もいいとこだ!

「じゃあ、いくからね……」

思わず悲鳴を上げそうになるが、彼女の動きが随分《ずいぶん》とゆっくりだ。

オレの体調でも心配し、様子でも見るつもりなのか、正面から真っ直ぐに突っ込んできている。

「左の拳《こぶし》で顎《あご》を狙っている。ハズすぞ」

囁《ささや》く様な声が出るや、彼女の攻撃を右サイドにかわし、そのまま腕を掴《つか》んでみせた。

何だ……? 今のは……。

「キアンちゃん。そこまで手加減しなくてもいいよ。ホントに大丈夫だから」

――彼女は慌てて腕を振りほどき、後方に飛び退《すさ》る。

戦っている時でさえニコニコしていた彼女の表情が一変《いっぺん》、真剣みを帯びている。急にどうしたんだ?

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