《MUMEI》
例えるなら猫ね…
 









―――――――――――ザァァァ……




雨。







降りしきる雨に真っ黒な背景…


冷たい夜、そこに立っているのは小さな……












「あたし?」














中途半端な黒髪に昔お気に入りだった淡い青色のワンピース。客観的な視線から私は私を見る


―――――――いつだろう、これは







冷たい、悲しい、ぐるぐる頭に流れるあの時の感情









―――――――――あの時っていつだ?













「思い出せない……」













頭を抱えながら目の前にいる小さな私を見ていると後ろからアイツの声、












「わからないの?」

「!!」











今日一緒にいた灰親楓がそこにいた

吸い込まれそうな黒い背景に佇む黒い傘をさしたアイツ



どこもかしこもびしょ濡れで地面にはいくつもの水溜まりができている。















「この子は君なのに覚えてないの?」

「何が……」

「雨の中君は一人泣いていた」

「やめてよ」








多分最低な出来事。

頭がグラリと揺らいだ……












「何で泣いているかわかる?」

「やめてって…」

「裏切られたからねあの人に…」

「お願いだから」

「あの人ってわかる?あの人はね……」
「やめてッッ!!!」










……ハァ、ハァ、




感情が乱れて息切れや動悸が激しい。私は苦しくて胸元を押さえた。














「大丈夫?」

「!」









いつの間にか私の目の前にいた

そこにはいつもの馬鹿にした笑顔のない無表情の灰親楓、私の濡れた頬を包むように手をそえた。













「君の理想は痛々しい。心の底では無いと理解してるのにそれを受け入れる隙間がない」









近付くお互いの顔、離れたいのに近付きたくないのにアイツはそれを許さないように私を力で固定する。












「ねぇ、何で?君が一番わかっているハズなのに」

「知らない……なにも知らない私は――ッ!」










時が止まる


思考も身体も何もかもが私から自由を奪う。そして視界の隅にフワリと飛んだアイツの持ってた黒い傘、


そして私とアイツは―――――













キスをしていた。


無理矢理に押しあてられアイツの長い睫毛が近くにある、二人は雨に濡れる。

滴った髪が肌が近くに……








何で!?嫌だ!嫌だ!!










嫌だァァァ!!!













 

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