《MUMEI》 「ナイッシュー」 ポーンとボールがあちこちで飛び交う体育館、右半分は夜風のクラスA組の女子。もう左半分は他のクラスの男子。ネット越しに授業を受けていた。 男子を意識する女子はいつもより活気づいて可愛い声を誰よりもだしてアピールする。男子も同じくオーバーリアクションで目立とうと張り切る。 まぁ、別にいいんだけど…… とにかくうるさい。そんな私の憂鬱さに負けない奴が隣にもう一人、 「………ったく、うるせぇな」 「………………………」 青葉さんだった 美人なのに、美人なのになんでそんなんなの!? 憂鬱を通りこして殺意のこもった表情で周りの生徒を見据えていた。青葉はサッパリした性格故に皮を被った人間が大嫌いな子だった。 「青葉、佐野からメールきた?」 「全然」 「………………そ、そー」 あんの乙女野郎!! 「ま、まぁいずれ来るよ!」 「別にいいよどっちでも」 「………………………」 そうか、そういや青葉はあまり他人に興味がない。信用してないと心は開かない。 ………………佐野、残念ながら今のアンタに脈はこれっぽっちもないみたい。むしろシルエットにしかみえてないっぽい 何故だか同情が募る 「夜風――出番だよ――」 「へーい」 コートにいたクラスの子に声をかけられたのでよっこらしょっと立ち上がる。 「んじゃ行ってきますわ中村さん」 「夜風、」 「ん?」 呼び止められて振り向く。青葉はいつもの無表情の顔で、 「下手な笑顔はやめな、こっちが疲れる」そう言ってきてギョッとした。さすが親友、簡単に見透かされた 「わかったわかった」 逆に笑えてきて素の笑顔がこぼれる。そんな私に安心したのか青葉はわかるかわからないかの笑みを向けてくれた。それだけで元気が出てきて私は片腕をまわしながら「シャーいくぞー!」と声を出した。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |