《MUMEI》

 








バタン。








扉の閉まる音、そしてガチャリと鍵まで閉める音、



薄暗い理科室の準備室、ビーカーやスポイド、他にも様々な実験用の道具や書類がありふれていた……。











「なんで、鍵?」

「なんでって逃げるからだよ」









―――――――チッ、バレてたか。













「理科の山本はだらずでね、この準備室はよく鍵が空いてるんだ。あ、あとそっちのドアから出ようとしても無駄だゆ。こっちとちがってちゃんと鍵が必要だからさ」

「…………………………」

「さて、話を戻すけど」










ジリジリ詰め寄る無表情な楓に恐怖が込み上がる。私は同じように一歩一歩後ろに後退り距離をおくがそれもつかの間、すぐに後ろは壁になった。




そして笑顔になった楓














「残念、逃げれなくなったね。怖い?」

「何が」

「俺が」

「ハッ、馬鹿じゃない?何で私が、」

「黒崎みたいな奴ってさぁ、」

「!!」











急に壁まで押しあてられ身動きがつけなくなる。夢と同じあの長い睫毛、また思い出して眉間にシワを寄せた。















「変に安心してる節があるよね、絶対自分は普通に過ごせるとか」

「は?」

「危機感がないってゆーか無防備ってゆーか」

「ハッキリ言ってよ」













夜風のまったく理解出来ないとゆう感じに呆れた笑いがこもる。そしてまた視線を合わせまるで獲物を捕らえた目付きで、













「今、この場この瞬間、俺が黒崎を襲ったら君のその純粋無垢な部分はどうなるかな?」

「―――――ッ!!?」














恐怖が悪寒が一気に流れる感じがした。

危ない危ない危ない、本能が叫ぶ。呼吸がしづらくなる…………

















「じ、冗談……だよな……いくらなんでも、そんな……」

「俺言ったよね崩れるさまが楽しいって」

「………………………………」

「怖い?怖いよねこんなこと言われたら、黒崎でも危ないってわかるよねぇ?」
















多分今の私はわかりやすいほど情けない顔なんだろう、怖くて声が出ない。私、こんな弱かったっけ?











 

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