《MUMEI》
全ての始まり
横たわっている男の口に、長く伸びた棒の先端を差し込む。

…………準備完了


後はスイッチを入れるだけ。
それだけでこの男は゛消える゛だろう。


大きく深呼吸し呼吸を整える。

本来の゛これ゛にスイッチを入れるのを躊躇う人間はいない…………

しかしこれは違う。


ボタンを一つ押すことがこれほど難しいなんて。
こういうのは勢いでやらなければならない。


いち……にの………さん

力一杯ボタンを押す。


爆音と共に持っていた棒が蛇のように暴れだす。

なんとかこの蛇をなだめようと両手でしっかり握った。

だが
……棒が口からはずれてしまった。


失敗だ。


−−−それにしてもこの音は好きになれない。もっとうまく作ればよかった。
この音は小さい時に、飛行機の近くで聞いたあのエンジン音に似ていた。



気を取り直しもう一度やる。

今度は上手くいった。
何もかもが想像通り。


……くっくっく……くははは……


今度は腕の中で蛇はおとなしくしてくれた。
時々蛇が何かを飲み込むのが、腕を通して伝わってくる。

くっくっく。

完璧だ。


小さくなっていく男の姿も、水浸しのこの床も。


はっはっは……飲み込まれろ……


くはははははははははははははははははは

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