《MUMEI》 酔い山本博樹は苦しそうに窓の外に目をやっていた。 「もうすぐパーキングエリアに着きますよ。それまで我慢して下さいね。私の車汚したらただじゃおかないですから」 私、三倉里緒は笑いながらそう言った。 「気分が悪くなるなら車の中で資料なんか読まなきゃいいのに。子供じゃないんだから」 「ああ……悪い」 山本はそう返事するのも辛そうだった。 心理学会期待のエースがこれじゃあな…… 私は笑いながら左へハンドルを切っていった。 山本は外に出て暫く休んでいる。 私は今のうちに資料を読み直し、整理することにしよう。 −−−−− 人を殺す為の道具は幾つも存在する。 近代化が進むにつれ、その道具は姿を消していった。 それに従って殺人を犯す場合は、より身近な゛もの゛で行われるようになった。 包丁のような刃物 バットやゴルフ棒のような鈍器 こういったものが代表に挙げられる。 先程挙げたものは突発的な殺人に多く使われるようだ。 一方、計画的な殺人の中にはあるものを改造して使うケースが見られる。 ……この凄惨な事件に使われた凶器は …………改造された ……………掃除機。 前へ |次へ |
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