《MUMEI》 仕事暫くしてから山本はコーヒーを2つ持って戻ってきた。 「悪かった。まさかこうまで気分が悪くなるなんて思わなかった。すまん。これ、砂糖たっぷりのコーヒー」 「どーもです。もし吐いたりしてたら高速道路に投げ捨てるとこでした。それじゃあ行きますか」 私はアクセルを踏み込んだ。 「着くまで資料を読むのは禁止でお願いします。それにコーヒーを零しても、それなりにペナルティーあるんで覚悟しといて下さいね」 「あいかわらず車好きだな。里緒は理系だったろ。車関係の仕事に就けばよかったんじゃないのか?」 「まぁちょっとした縁ですね。そのおかげで私みたいな優秀な助手に恵まれてよかったじゃないですか」 「立派な雑用係に育ってくれてうれしいよ。一生俺の世話をしてくれないか」 「プロポーズはノーサンキューです」 誤解がないようにそろそろ言っておこう。 私と山本は変な関係ではない。 ただの仕事のパートナー。 ……パートナーと言うのも少し語弊があるか。 山本は私より10歳以上年上で、心理学会の中では有名人だ。山本でさえこの世界では若者扱いされるのだから、私は山本が言うように雑用係と呼ばれるぐらいが調度いいのかもしれない。 そしてまったく敬語を使わなくなったのはまぁ成り行きみたいなものだ。 恥ずかしいので説明は省略させてもらう。 「私は結婚する気はないです。それに心理を研究しているのがばれると、みんな逃げていきますね」 「勿体ないな、顔はかわいいのに」 「はは、誉めてないですよねそれ。まっどうでもいいです。私は一人で趣味にふけって生きます」 「趣味ってなんだよ。また機械とかそんな関係だろ?」 「そうですよ。昨日面白い記事を見つけて読んでたんですよ。古い記事です、1970年代の」 「それは古いな、俺はやさしいからなんでそんな古いものがあるのかは聞かないでおいてやるよ」 前へ |次へ |
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