《MUMEI》 扉和気あいあいとしていたが目的地が近付くと山本が真剣な顔で聞いてきた。 「覚悟は出来てるか?」 「大丈夫ですよ」 胸を張って力強く答えた。 「本当に?」 「本当に大丈夫ですよ。私はそういうのは平気なんです。あの映画も見たし」 この事件が起きたのは2年前。 改造した掃除機を使っての残虐な殺人事件は当時の人を驚かせた。 その後、すぐにこの事件をモチーフにした映画が作られた。 事件に使われたのは旧式の掃除機だが、映画では自走式掃除機が使われた。 自走式掃除機とは、掃除機がゴミを見つけてほうっておいても勝手に掃除してくれる便利なもの。 その掃除機が暴走し始め、人間まで吸い込むようになる。 その映像は残虐そのものだった。 人を押し潰し、体の中の臓器を徐々に吸い込んでいく。 体の中からいくつかのヒモが出てくるシーンは失神する人もいたぐらいだ。 この映画を見た人は、夜中に勝手に掃除機が動き出すのではないかと心配し、バッテリーを抜いてからでないと眠れないという人もいた。 「私は大丈夫ですから。それに私ほどの人をただの運転手にする気ですか」 「覚悟があるならいいんだ。野暮なことを聞いて悪かった」 この事件への扉を開いた瞬間であった。 前へ |次へ |
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