《MUMEI》

「アレックス、人は平等に幸せになれる権利があるんだよ。君だけが追い込まれるのはフェアじゃない。
約束だ……君が笑ってくれたら私は前に進めそうな気がする。」

アレックスは得意な皇帝のような笑みを浮かべた。


「じゃあ、俺が幸せになったらあんたはジローに告白してくれるんだな?」

自分で首を絞めてしまう。


「……ああ、いいよ……。誓うよ。嘘はもう、つきたくない。」

本音を漏らしてしまう。
いつの間にか、アレックスに屈服したのだろうか。


「誓いを立てよう。」

彼の長い指を二本、私の額に付けて誓約を結んだ。
恭しく私はアレックスにひざまづいた。
彼はさしずめ聖ヨハネ洗礼を受ける者だ。

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