《MUMEI》

 『久しぶりだねぇ』
「そりゃそうだ。年に3回しか会ってないもん」

 そんな話をしながら未來と階段を上る。
 《3階の1番奥》
 扉を勢いよく開ける。扉は意外にも重く、ガラッといううるさい音をたてて開いた。
 「あ」
 ベットで本を読む彼。彼はこちらを振り返る。パタンと本を閉じる様子は何ともサマになっている。
『トオル、久しぶりぃ』
「おひさ」と、未來。
3分の1年ぶりの再会だというのになんと素っ気ない。
 「久しぶり。アヤ、未來くん」
 トオルはベッドを起こし座り直す。こちらを見、さわやかスマイル☆
 「2人とも、元気にしてた?」
『超元気。トオルに会うの楽しみにしてたんだから♪
・・・ま、コイツは忘れてたけど』
あたしは未來を指さす。
「だから、あれは冗談だって!」
手を体の前で振り、必死で弁解する。
 ・・・可愛い。
 本当はいじめたいトコだけど可哀想だから止めておこう。Sになれないあたしである。
 「別に他の日にも来てくれれば良いのに」
トオルが再び口を開く。
『でも、なんかもう、年に3回っていうのが固定しちゃって今更変えれないってか・・・』
あたしたちがトオルの見舞いに来てるのは、さっきから言ってるけど年に3回。その3回は、あたしの誕生日・トオルの誕生日・トオルが事故に遭った日。
 
 んじゃあ、トオルのこと簡単に説明するね。
 [酉希 通流]
これがトオルの本名。
読みは、"ゆうき みちる"。だけど小学校の頃あたしの隣にいる誰かさんが"トオル"って読み間違えたの。それ以来、あたしも"トオル"って呼んでるって訳。
 名前については以上!
 
 「いいなぁ、学校で勉強できて」
彼は未來に話しかける。
「勉強なんかやってやれるかって感じだよ」未來は、真面目に嫌そうに言う。「それより、姉貴と話してたい♪」
 ・・・無視。
「学校に行ってないオレなんか自主勉なんだから。未來くんより、頭悪くなっちゃうよ」
「嘘付け。オレより頭良いくせにぃ」

 ・・・てな会話が30分ほど続いた。
その間、あたしはというと

 『あった!ねぇねぇ、これって9月だよね?』
「そうだよ」
『じゃあ、これください!』

 『たっだいま〜。・・・って、まだやってたの?』
あたしが病室に戻ると、まだくだらない会話が続いていた。
 『はい!トオル!』
あたしはバッグから取り出し、トオルに渡す。それは水色の袋と、濃い青のリボンできれいにラッピングされたプレゼント。
 『今日はトオルの誕生日だから。
ごめんね。買う暇がなくて、今買ってきた。』
「本当!?ありがとう。開けてもいい?」
あたしは頷く。
 シュルッ とリボンをほどく音、カサカサ と袋を開ける音が病室に響く。 
トオルが中から取り出したのは手のひらより1周り大きい箱。

前へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫