《MUMEI》

足元の大地がぐんぐん遠ざかり、やがて現在の世界地図とは全く異なる地形の大陸を、眼下に浮かび上がらせる。
闇の大地では、活発化した火山活動を示すオレンジ色の爆発光と、天津神側と国津神側の戦闘によるエネルギー光が、
時折閃(ひらめ)いている。やがて緩やかに湾曲していた地平線が、急なカーブを描くようになり、大地そのものが球面に見え始める頃、ゼウスは先程まで「見下ろしていた」大地を「見上げていた」。
闇の虚空に浮かぶ青い惑星地球の姿は、何度見ても美しく、壮大すぎる宇宙と比べると、あまりにもはかない。
今ゼウスの周囲には、幾千幾万の星々の光が取り巻いていた。
これら無数の星ひとつひとつの周りに惑星が回っているのだ。
長い旅路で幾つもの惑星を見てきたゼウスも、
地球ほど美しいと思う惑星に出会った事は、ついぞ無かった。
誰かがこの惑星を保護しなければ・・・・、ゼウスはあらためて思う。
それにはやはり、天津神族による強固な支配体制が必要なのだ。
この宇宙には、他の生命の恐怖をエネルギー源とするナイアーラトテップを始め、地球を獲物とするような凶暴な怪物どもが、無数に爪をとぎ、うごめいているのだから。

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