《MUMEI》

巨人族との間で五十年間(ちなみにその惑星での一年は地球より一・五倍長い)続いた戦争は、
最終的には天津神側の勝利で終わったが、長期の戦争は社会経済をどん底まで落とし、国民のクロノス政権への不満をつのらせる事となった。
社会不安から逃れるように、国民の間に「螺旋(らせん)教」と呼ばれる宗教がひそかに流行を見せ始めた。
「宇宙の根本原理とは
螺旋である!」
螺旋教の荒唐無稽なスローガンは、始めのうちは社会に無害なものに思えた。
「螺旋とは何だ!?それは進化の意志である!生物の遺伝子、原子核を周回する電子、恒星を巡る惑星から、巨大な銀河まで、全てが螺旋と言う本質を宿している。宇宙の始まりであるビッグバンを発生させたのももまた、螺旋の力であった!おのれの内なる螺旋の叫びに耳を傾けるのだ!だが・・・・」
教義のその先が問題だった。
「例えば遺伝子の異常・・・・螺旋の歪みが生物の個体に深刻な病をもたらすように、現在のクロノス政権を螺旋に例えるならば、歪みきった螺旋と言えるであろう!このままクロノス政権が続くならば、我々天津神の文明は遠からず死病に犯され、屍をさらす事になるのは未来における必然である!」
首都惑星に不吉なニュースがもたらされたのは、こうした政情不安定な時期であった。
辺境の植民地惑星が、宇宙の各地に散らばっているナイアーラトテップの一匹に接触したらしい、と言う情報が伝えられてきたのだ。
その宇宙の癌細胞のような存在の事は、銀河に張り巡らした情報網の中、天津神族の最高機密を握るトップの間では、すでに知られる存在となっていた。
ナイアーラトテップによって、すでに幾千幾万の宇宙の文明が滅びの道を歩んだ事も・・・・。

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