《MUMEI》

ナイアーラトテップと言う癌細胞が、天津神文明全体に転移する前に、早急な外科手術が必要とされた。
トップ間の秘密会議の
席上で、その強行案をごり押ししたのは、若きゼウスである。
すなわち、未来での禍根を絶つための、警告なしの惑星破壊ミサイルによる、徹底的な殲滅!!


狂ったか、ゼウス?!
あの植民惑星には、数万人の天津神の民がいるのだぞ!
一部の抗議の声も受け付けぬ程に、すでにゼウスの発言権は強力な影響を持つようになっていた。
仮に内心で反対を叫ぶものも、ゼウスによる粛清を恐れ、沈黙した。
「警告後の攻撃では意味が無いのだ。ナイアーラトテップとの接触は、今までの二度のエイリアンどもとの接触をはるかに越える、危険なものだ。一瞬の判断の誤りが、我々の築きあげてきた文明を崩壊させてしまう。
今は、それほどの危機的状況に曝(さら)されているのだ!
肉を斬らせて骨を絶つ!天津神族がこの先も宇宙で生き延びていくためには、今こそ甘いセンチメンタリズムに惑わされぬ、冷酷な決断が必要なのだ!
父上!ご裁断を!!」
これまで強行策をごり押しし、他の意見は聞かぬ
と言う態度を見せていたゼウスが、何故最後の判断を父クロノスの判断に丸投げにしたのか?
黙って瞑目し、腕ぐみをしながら会議を聞いていたクロノスは、
「よかろう・・・・」
短く呟き、許可した。
公的にはクロノスの指示の下、かくして数万の
生命と、一つの惑星を
犠牲として、ナイアーラトテップ抹殺作戦は終結した。


クロノスはやはり狂気の支配者だ!これに従い運命を委ねるならば、間違いなく我々の文明は滅びの道を歩む事になるぞ!
いよいよ勢いを増す
「螺旋教」を筆頭に、現在の政権を良し、としない気運がさらに高まっていった。

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