《MUMEI》
異常者
「僕はそんな答え求めてないよ」

驚いた表情の陽菜に言うと、陽菜の顔はどんどん青ざめていった。

「佐伯の相手する前…僕、なんて言ったっけ?」

「…ぅ……ゃ…」

また、まともに喋れなくなったのか、僕を見る陽菜の目は瞬きも忘れて、ただ涙を溢れさせている。

「他の人が相手でもイッたら駄目だって言ったよね…どうだった?佐伯に相手されてイッたの?嘘吐かないで教えて」

「……ぁ…」

「どうだったの?」

「…ゃ…」

「言ってみな?あんなのただの暴力だから気持ち良くなんかなれないよね?陽菜は僕と違っておかしくないもんね?」

「…ぅ…ぅぁああああああぁあッッッ!!!!!!!」

途端に陽菜が、叫びながら暴れ出した。
その暴れ方は“眞希から逃げたい”と言った陽菜の言葉を、そのまま表したようだった。


ボロボロになった体のどこに、そんな体力が残っていたのか…。
僕は首輪に付けられた鎖を、思い切り引いた。

「ゔっ!!」

首に衝撃を与えられた陽菜は、短く呻くと体勢を崩した。

「普通の女の子はね、あんなことされてイッたりしないよ?自分でも理解るよね?」

陽菜が反抗的な目を向けた。

「真鍋に会いたいって?あんなことされても想い続ける人がいるのに、どうして陽菜の体はあんなに反応したんだろう?」

「……せ」

「陽菜って佐伯のこと嫌いだったよね?忠誠を誓ったわけでもない久し振りに会った昔の同級生にあんなことされて潮まで噴いて…昔から嫌いだった人に何回イかされたの?」

「…な…せ」

「歪んでても一人の人を想い続ける人間と誰が相手でも痛め付けられれば体が反応しちゃう人間と…おかしいのはどっちかな?」

「離せぇぇええぇーッッ!!!!!」

再び陽菜が、暴れ出した。

「おまえなんかと一緒にすんなッ!あたしはおかしくないっ、おかしくないッッ!!!!!」

鎖を引っ張りながら何度も、そう叫ぶ陽菜の顔を僕は、思い切り叩いた。
陽菜が叫んだ以上に、何度も。

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