《MUMEI》

会社の方の、固定電話が光ってた

…留守電…

優香から何度も電話が入ってたんだ

イズミが大変だって…
…倒れたって…

慌てて雅人さん家にむかったんだ

駆け付けた俺に
優香が平手打ちしたんだ

…自分の女ほったらかしにして……琢磨…アンタ何やってんのよ!

………痛かった…

上がれ、琢磨…
…まだ寝てる…側に居てやれ…

雅人さんに、そう言われたんだ…

…イズミ…高熱を出してたって…

お医者さんに、来てもらって、診てもらったらしい……

………イズミが苦しそうにしてた…

………そっと、イズミの手を握ったんだ…

……手が熱い……
…しばらくして、イズミは、落ち着いたように、また、眠りについたみたいだった…

………夕方、目を覚ましたイズミが…

…俺を見て

……ごめんね……迷惑ばかり…かけて…

そう、言って、手を引っ込めようとしたんだ…

…俺、その手を引き戻したんだ…

………イズミ、泣いてた…
………会話はしなかった…
イズミ…また、寝ちゃったから……

………琢磨…夕食…

優香に声を掛けられたんだ
……いらない…

…食べなきゃダメだよ…

…食べたくないんだ…

…ずっと、あまり食べてないんでしょ?
…イズミ、言ってたよ…
何を作っても、あまり食べてくれないって…

………………食欲…ないんだ…

…性欲も?

……………………うん…

………でも、食べて…
二人とも、倒れちゃうよ…
……………イズミの手を、そっと、布団に戻したんだ
……リビングに行くと、アサミが居たんだ

…………そんなに好きなら、仲直りすればいいのに…
アサミが言ったんだ…

……俺、何も答えず、椅子に座ったんだ

………好きだから、尚更だろ…

雅人さんが言った

………聞いてる?…ねぇってば…

えっ?………

俺、上の空だった…

……佐久間…知ってるんだとさ

雅人さんが言ったんだ

…アサミと佐久間が知り合い?…

………アンタ…ムチャするんだね…
…佐久間の兄って、黒い連中と、仲いいんだよ…

アサミが言ったんだ

…問題ねーよ…とことん揉めれば、向こうが勝手に死体になるだけだ…

雅人さんが、言った…

…………悪い人なんだ…アンタも…

アサミの質問に

そうね…どっちかって行ったら、間違いなく黒い側ね……だけど…神様は何もしてくれないわ…どんなに祈ってもね…
…琢磨が黒なら、私たちも黒でいい…
……こんなに、強い意志を持ってる人を…私は知らない…
…普通の計りで見たら、琢磨の欠片もわからないわ…
優香が、そう、言ったんだ

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