《MUMEI》
消えた
「おい、洋平!どっち逃げればいい!?」


司達は見えないのだ。それ故、洋平に誘導してもらうしかない。


「洋平!!逃げんだろ!?何突っ立ってんだよ!」


しかし当の本人は、全く逃げようとはせず、それどころか、もう怯えてさえもいない。


「居ない…」

「あぁ?」


先程迄の司達と同様、今度は洋平も辺りをキョロキョロしだし、気の抜けた声で言った。


「居ないんだよ…消えた…」

「消えた?」

「あぁ。何か知んなんけど、いきなり消えたんだ…」

「…じゃあ、俺達助かったのか?」


「多分…。」


それを聞いた司は、安堵のため息をついた。

しかしどういう訳か、優香と美樹は不安げな表情のままだ。


「どうした?」


それに気付いた洋平が二人に声を掛けると、美樹が代表してその訳を話した。


「お、同じなの…真弓の時と‥。
何にもないのに怯えて、何かに追われるように突然逃げだす…。
さっきの井上君みたいだったの…。」






万に一つとして浮かび上がる可能性。


最悪の状況が考えられる。



「探しにいくぞ!!」


洋平がそう意気込むと同時に、遠くの方からパトカーのサイレンが聞こえた。

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