《MUMEI》
大失敗
ずいぶん待っても、例の男子生徒はまりえのそばから動かない。

あれ、なんで行かないの?

と不思議になって見上げると

彼は甘く整った顔をずいっとよせてきた。

「ん〜? なんっか見覚えあるんだよなー」

あまりの近さにたじろくまりえをしばらく無遠慮にながめて

彼は「あっ」と声をあげた。

「わかった!夏休み前、駅のホームで告ってフラれてた子だ!」


直球――――――――――っ!


グッサリ刺されてよろめくまりえをよそに

彼は後ろをふり向いて比呂を見ると

「あー、人違いってそういうことか。偶然を装っての『おはよう』なんて、かーわいー」

見透かされてるッ!

あっ、しかも比呂くんこっちに来る!

もうここはとりあえず、逃っげろー!

全速力で廊下を走って戻る。

後ろで「あれっ、行っちゃうの?」と例の男子生徒の声が聞こえた。

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