《MUMEI》
蟻地獄 6
まさかバスタオル一枚で出てくるとは思わなかっただけに、男は目を見張った。

「おお、いいじゃん、いいじゃん」

美紀より年下。23歳くらいに見える。男はあぐらをかいて畳の上にすわっていた。

「すわりな」

「服を着させてください」

「いいから、すわりな」

バスタオル一枚では怖過ぎる。美紀は懇願した。

「お願いです。服を着させてください」

ドンと畳を叩くと、男は美紀を睨んだ。

「すわれって言ってんだよ!」

美紀は唇を噛むと、静かにすわった。両手でしっかりバスタオルを掴み、正座した。

「俺の名前は金田竜平。女の子だからって甘く見ねえぞ」

美紀は俯いていた。胸のドキドキが止まらない。

「じゃあ今すぐ40万円払って」金田は手を出す。

「・・・・・・」

「何黙ってんだよ」

玄関にもスーツを着た屈強な男が二人いる。美紀は金田に頭を下げた。

「すいません、ちょっと待ってもらえますか?」

「舐めてる、もしかして」

美紀は顔をしかめた。何でそうやって脅すのだろうか。普通に会話できないから怖くて電話もできなくなる。

「40万円、今ないんだろ?」

「はい」

「じゃあ、体で払ってもらうよ」

美紀は心臓が止まりそうになった。それだけは許して欲しかった。

「あ、それは・・・」

「男なんか金にならねんだけどよう、おまえは行けるよ。その美貌なら1週間で40万円返済できるよ」

全身が震える。美紀は声が上ずった。

「それだけは、許してください」

「大丈夫。体を売るわけじゃないから。SMクラブだよ」

SM・・・。美紀は気が動転した。彼女が黙っていると、金田は玄関の男二人に行った。

「おい、この子、裸のまま連れて行きな」

「はい」

屈強な男二人が部屋に上がってくる。美紀は恐怖の顔で二人を見た。腕を掴まれる。

「ちょっと待ってください! ちょっと待って!」

「バカ、声デケーよ」

息が乱れる。美紀は哀願に満ちた目で金田を見た。しかし金田竜平は冷酷に言った。

「今夜ステージに立ってもらうぜ」

「ステージ?」

「素っ裸にされて手足縛られて、女王様にいじめられるんだ、客の前で。簡単だろ」

鬼畜だ。そんなこと出来るわけがない。美紀は両手をついた。

「それだけは、それだけは勘弁してください。この通りです」

頭を下げる美紀に、金田は言った。

「ダメだよ、だってあてないんだろ」

「あります」美紀は顔を上げた。「親戚に、事情を話して頭を下げます」

「ふーん」金田は疑いの眼差しで美紀を見る。

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