《MUMEI》
うし
「いや、たいした理由はないです。短時間でテキパキってのは性に合わないだけです。ゆっくりやらせて下さい」

−−やっぱり牛っぽい。

「はははそうですか。では明日からよろしくお願いします。今日はゆっくり休んで下さい。」

何度もここに来ているのでたいした打ち合わせは必要ない。

すぐにミーティングは終わり、これから一週間泊まるホテルに向かった。


「やっぱり、アールが何か隠してるとか思ってるんですか?」

「ん、どうだろ。その可能性もあるけど本当に正しいことなんて分からないからね」

曖昧な言い方だ。
確信がない以上こういう言い方になるのは仕方がない。



暫くは無言でのドライブとなった。


「犯罪の抑止力って何だと思う?」
ぽつりと山本は言った。

「それは罰があるからじゃないですか。アールも死刑が確定してますし」

「もし、死んでも良いという人間にはたいした抑止力にはならないだろ。
俺は一番の抑止力は理性だと思っている」

「なんかそれ矛盾してません?
死んでも良いみたいな人間に理性を求めるんですか?」


私の質問に対しての返事だったのかは分からないが
「人は……人を殺したら生きていけないんだ」
と言い、この話しは終わった。

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