《MUMEI》
不良封印
                

学校に着くと俺は直行でトイレに行った。

行ったと言うより逃げたの方がふさわしかった。

巧斗が女子に囲まれる瞬間に居合わせたくなかった。

たかがそんだけ。

いくらケンカが強かろうが強気で居ようが

心が弱かったら意味がない。

今の私は臆病者…かな…。


「ねぇ。」

いきなり声をかけられた。

振り向くと3人の女子。


「…何だよ」

仁王立ちで腕まで組んで睨んできやがるからムカついて力を込めて睨み返した。


すると少しビビったのか唇を噛み締めた。

「あなた最近、海王寺くんと登下校してる
みたいだけど…付き合ってるの?」


「…付き合ってねぇし。つーかそれが何?」

「そうよねぇ。あんな完璧な人がこんな不良で男みたいなの好きにならないわよね。」

「完璧ってどの辺が?」

「はぁ?全てに決まってんでしょ?まさかあんなにイケメンだったとは知らなかったけどね。」

「……」

やっぱ眼鏡かけずに教室行ったんだな。


「海王寺くんにはもっと可愛らしい女の子がふさわしいの。あんたじゃ不釣り合い過ぎるのよ。」


言い返せない。

確かに俺は可愛いなんて言葉は無縁だ。

毎日ケンカしてた男みたいな私には。


「自覚したみたいね。じゃあね、不良女さん」


女3人は笑い声を響かせながら出て行った。


あ〜今の女、メッチャ殴りてぇ…

なんて廊下を歩きながら思った。

でもそんな事よりも情けなさで胸がいっぱいだった。

前の私ならこんな事なんかで

胸が痛む事はなかった。


「情けないなぁ…私…」


今は "俺" なんて言ってられない。

私が女の子らしくなれば

誰からも文句は言われなくなるのかな…?



学校を早退してあの豪邸に帰った。


「一花!なんでアンタここに居ると!?」


登米婆が居やがった…。

いや、登米婆に手伝ってもらうか。


「身だしなみを整えようと思って早く帰って来た」


「やーっと女らしくなるかい。どれ、手伝ってやろう。」


「マジで!?」


ペシッ!

「下品な言葉遣いすんじゃないよッ!」

頭を軽くはたかれた。


「は、はい…」


それからメイクルームとやらに移動して始めた。

                

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