《MUMEI》
作戦会議 1
とある日曜日。朝まで降っていた雨もやみ、雲間から光が差し込むようになった。

「天も我らの出陣を祝福しとるな」

「出陣?」美紀が聞く。

白茶熊賢吾と露坂美紀は、タクシーを拾いに通りへ出た。

「美紀。抜かるなよ」

賢吾の目が怪しい。

「何が始まるんですか?」

「これからワイの仲間と会って作戦会議や」

「作戦会議?」

「大きい声では言えんが、金庫破りや」

美紀は一瞬真顔になったが、すぐに笑顔を見せた。

「何言ってるんですか」

「金庫破りというのは嘘やけど、もっと恐ろしいことを考えている」

「何ですか、恐ろしいことって」

「知りたいか?」賢吾が笑顔で睨む。

「し、知りたいです」

緊張の面持ちの美紀に、賢吾は言った。

「これを聞いたら最後、もう後戻りはできなくなるで」

「どこまでもついて行きます」美紀は真剣に答えた。

「国家転覆や」

美紀はさすがに焦った。これは冗談ではないかもしれない。

「本当ですか?」

「嘘や」

「何ですか」美紀は呆れた顔をした。

ほとんど意味があるとは思えないやりとりをしている間に、タクシーが来た。

二人は待ち合わせのファミリーレストランへ急いだ。

ビシッとスーツを着ている美紀に、賢吾は言った。

「きょうは普段着でも良かったのに」

「こういう格好、嫌いじゃないんです」

「ワイは薄着も好きやで」

「はい?」

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