《MUMEI》
作戦会議 3
賢吾が笑顔で言う。

「では紹介しよう。アシスタントの露坂美紀さんや」

「初めまして。よろしくお願いします」美紀は深々と頭を下げた。

「で、このライオンみたいのが映画監督の丹危雷音。略して短ライや」

「たんらい?」美紀は賢吾の顔を見た。

「監督と呼べばええ」

「あ、そっか」美紀は怖々短ライを見つめた。「よろしくお願いします」

「ヨロシク。紅一点だな」

「え、あ、はい」

緊張している。美紀は胸に手を当てて小さく深呼吸した。

「で、このキングコングみたいのが・・・」

「ちゃんと紹介しろ」激村が睨む。

「漫画家の激村創や」

「げきむら、はじめ・・・先生」

「よろしく」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「二人とも気は短いが性格は荒っぽいから心配ない」

「賢吾、フォローになってないぞ」激村が笑う。「それにオレは短気ではない」

ウエートレスがサーロインステーキを運んで来た。

「なぜ俺が最初に頼んだのに4ついっぺんに来るんだ?」

「え?」

「ギャグで言ってるだけだから気にしなくていい」激村が優しく言った。

「あ、はい」

ウエートレスは緊張した面持ちで料理とドリンクを並べた。

「以上で・・・」

「大丈夫だ」短ライが遮る。

「ごゆっくりどうぞ」

ウエートレスがややムッとした顔で去っていく。

「ん? 今ウエートレスがムッとしてなかったか?」

「ええ加減にせえ。火剣と呼ぶぞ」賢吾が注意する。

「カケン?」

「知らなくていい名前だ」激村が美紀に言った。

4人は食事をしながら談笑した。

「賢吾。いよいよ攻めるか」短ライの目が光る。

「手遅れにならんうちに手を打たねばならん」

「桃園の誓いみたいだな」激村が笑顔で語る。「オレが関羽で短ライが張飛」

「バーロー。俺が関羽だ!」

「短ライはどう見ても張飛だろ」

「ダメだ、俺が関羽だ」

激村が賢吾の顔を見る。

「賢吾も劉備というタイプではないな」

「誰がオックスベーカーや」

「言ってない」

激村が笑いながら言う。

「賢吾はどう見ても鳳雛先生だろ」

「誉め言葉だと思って受け止めておこう」

「桃園の誓いなんて凄いじゃないですか」美紀が笑顔で話に加わる。「本当に国家を転覆しそうな勢いですね」

「君は三国志を読んだのか?」激村が身を乗り出す。

「はい」

「素晴らしい」

「ワイが見込んだおなごや。プロレスには詳しくないがな」

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