《MUMEI》
作戦会議 4
短ライが聞いた。

「で、具体的にどうする?」

「まず記者会見を開く。顧問弁護士の強豪大兵も同席する」

「頼もしいな」激村が言った。

「あとはワイと短ライと激村。この4人でええな」

「どんな記者会見を開くんですか?」美紀が聞いた。

「まずは、夢のクリニックのシステムを紹介して、度肝を抜こう。まあ、これ言ったら政治家と金持ちにプレッシャーを与えることができる。それも一つの狙いや」

「オレも語るぞ」激村が乗っている。「くだらない質問をする記者がいたら顔面にダイナマイトキックを炸裂させる」

美紀は目を丸くした。

「ダメですよ暴力は!」

「暴力じゃない。比喩だ。あくまでも言論戦だ」

「何だ、びっくりした」

賢吾が真顔で言う。

「で、新たな展開として、ジャンヴァルジャン基金の創設を発表する」

「ジャンヴァルジャン基金?」美紀は初耳だった。

「いい名前だな。でもほかにありそうだが」

「ネットで調べた限りではそういう名前の基金はなかったが、クレームがついたら考えればええ。でも今までの基金とは中身がちゃうで」

「記者会見も関西弁で喋るのか?」短ライが横道に逸れる。

「当たり前やないか」

「院長はいつ東京に来られたんですか?」

美紀の問いに、賢吾の目が怪しく光る。

「いつって、ワイは生まれも育ちも東京や」

「え?」美紀は慌てた。「嘘、関西の人とばかり思ってました」

「ワイは関西に住んだことなんかあらへん。荒川、文京、墨田と三代続いた江戸っ子やあ」賢吾は人差指を回転しながら上げた。「てやんでえ!」

「キャハハハハハ!」

「受けた」賢吾が喜ぶ。

美紀は笑顔で聞いた。

「何で関西弁で喋ってるんですか?」

「インチキ関西弁やないか。ほんまもんの関西人が聞いたら嘘とわかるよ、てやんでえ!」

「東京の人間もてやんでえ、なんて言わない」激村が言った。

「てやんでえ! そうか」賢吾は本題に戻った。「また横道に逸れたな。ともあれ記者会見は爆弾発言の連発や」

「緊張しますね」美紀はかしこまった。

「美紀は家でテレビ見てればええ。記者会見の後どうなるかわからんからな」

賢吾の言葉を聞いて、美紀は一抹の不安を覚えた。ヒットマンが会場に乱入するような危険はないのだろうかと。

「あまり無理をせず、気をつけてください、皆さんも」

「賢吾。素晴らしい人を見つけたな」激村が感心する。

「そんな、そんな」美紀は照れた。

「俺の映画に使いたいくらいだ」

「ダメや」賢吾は即答した。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫