《MUMEI》
作戦会議 5
店の外には、迷彩服を着た大男が歩いていた。

「メシにするか・・・ん?」

火剣獣三郎は、何気なく店内を見た。窓際の席にはあまりにも見慣れた面々がいる。

「哲学を忘れた乱暴者・激村創。暴走監督・短ライ。セクハラ大魔神・白茶熊賢吾。なんちゅう顔ぶれだ?」

そして、賢吾の隣には見たことがない顔が。

「あの女は何だ? ははーん、さては賢吾の愛人か。れおんという天使のような若妻がいながら風林火山とは、ふてー野郎だ」

火剣は店の中に入った。最初に気づいたのは激村だ。

「まずい男が入って来たな」

「え?」

皆は入口のほうを見た。美紀は目を見張った。激村と同じくらいの大男が危ない笑顔で歩み寄って来る。迷彩服上下で、髭も猛々しい。髪は短ライよりも激しい。ライオンのたてがみそのままだ。

「テメーら、俺様に黙って何密談してんだ?」

「密談なんかしてない」

「うるせえ」

激村の言葉を遮ると、火剣は美紀を見た。

「ところでこの美女は誰だ?」

「初対面で失礼だろ」

「うるせえ」

「何がうるさいか聞こうか」

激村が立ち上がると、火剣は隣のテーブルにすわった。

「冗談だ」

「紹介しよう」賢吾が言った。「ワイの新しいアシスタントの露坂美紀さんや」

「ミキ?」

「よろしくお願いします」

「漢字を一発で当てたら何でも言うことを聞くというゲームはどうだ?」

「え?」美紀は焦った。

「美しいに21世紀の紀や」賢吾が即答した。

「テメー、ヒロインにはスリルを体感させるのが一番の成長の秘訣なんだぞ」

「日本語を喋れ」激村が睨む。

「あの、お名前は」

美紀が聞くと、火剣は目を丸くした。

「名前?」

火剣が立ち上がる。

「あ、しまったあ・・・」

「いらっしゃいませ」タイミング良くウエートレスが来た。「ご注文がお決まりになりましたら・・・」

「待て。よくも俺様の自己紹介を遮ったな」

「はい?」

「何でもない」激村がウエートレスに言った。

「火剣」短ライが睨む。「喋る前に注文を先にしろ」

「うるせえ」火剣がメニューを見ながら言った。「えーと、牛鮭定食」

「吉野家か!」短ライが突っ込む。

「すいません、当店では牛鮭定食はやってないんですけど」

「じゃあ仕方ねえ。ジャンボハンバーグに大ライスにビールの特盛」

「大ジョッキですね?」

「違う特盛だ」

ウエートレスは真顔で言った。

「特盛というのはないんですけど」

「仕方ねえな。じゃあ大ジョッキだ」

「ご注文をご確認させていただきます」

「ところで激村」

「ジャンボハンバーグに大ライス・・・」

「テメーの息子とこの前・・・」

激村が立ち上がると、腕を伸ばして火剣に脳天チョップ!

「だあああああ!」

ウエートレスと美紀は目を丸くして激村と火剣を直視した。

「いい加減にしろ。注文の確認のときに喋るな」

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