《MUMEI》
作戦会議 6
火剣は脳天を両手で押さえている。相当痛かったらしい。

(このお礼はさせてもらうぜ)

「そうだ、名前やな。この男は火剣獣三郎や」

「かけん、じゅうざぶろうさん。珍しい名前ですね」

「白茶熊も激村も丹危雷音もみんな珍しいだろ」火剣が睨む。

「あ、そういえばそうですね」

ウエートレスが大ジョッキを運んで来た。

「お待ちどう様でした」

「サンキュー、サンクス、月2回」

「え?」

「一杯目はすぐに飲みほすからな」火剣がウエートレスを睨む。「客にすいません、すいませんなんて何度も言わせたらきょうの戦いは負けだ。そのくらいの気持ちで臨まないとな」

ウエートレスは怖々とボタンを指差した。

「あの、このボタンでお呼びいただければ・・・」

「ほう。君は勇者だ。名前を何と言う?」

「火剣。ジョッキで殴打されたいか?」激村が怒る。

「されたくない、されたくない」火剣は引いた。

話が前に進まない。激村が言った。

「賢吾、どうする。火剣がいたら30分で済む話が3時間になるぞ」

「どういう意味だ?」火剣が絡む。

「火剣」短ライが言った。「少し黙ってろ。今大事な話をしているんだ」

「ほう」火剣の目が燃える。「露骨に仲間ハズレか。いいぜ、いいぜ、この裏切者ども。俺様は他人なんだな。じゃあ俺様がこのテーブルで何を歌おうと、他人に注意される覚えはねえな」

「悪鬼でも身に入ったか」激村が睨む。「完全に魔の働きだな」

「とうとう人を悪魔にしてしまったか。では期待に応えて一曲目はデビルマンだ」

「やめろ」

「だーれも知らない知られちゃいけーないー・・・」

「それ以上歌ったらこの窓ガラスに頭から行くことになるぞ」

「白茶熊賢吾はだーれーなのーかー」

「ええっちゅうねん」

火剣は止まらない。

「だれもー知らなーいー、知られちゃーいけなーいー、白茶熊賢吾の正体をー」

「火剣。大ジョッキをゴチするからやめろ」

「さすがは短ライ。テメーだけは友達だな」火剣が喜ぶ。

「面白い人ですね」美紀が呟く。

「全然面白くない」

「美紀」火剣が呼ぶ。

「はい」

「呼び捨てにするな」激村が怒る。

「バッファロー! 親しみをこめてファーストネームを呼んだだけだ。美紀ちゃん、なんて呼ばれ方されるよりは、美紀のほうがいいだろ」

「あ、はい」美紀は勢いに負けて答えてしまった。

「激村みたいに紳士ぶってんのはモテねんだ」

「何だと?」激村が立ち上がりかける。

「言論の自由を暴力で封じる男・激村創。まさに憲法違反男だ。ガハハハハハハ!」

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