《MUMEI》
作戦会議 7
3人が心底困っている顔をしているのを見て、美紀は賢吾に言った。

「あたしが向こうのテーブルに行きましょうか?」

「それは名案やけど、美紀に悪いやないか」

「あたしは平気です。役に立ちたいし、ちゃんと準備しないとダメですよね、記者会見で発表する順番とか」

「君は本当に素晴らしい」激村が心の底から誉めた。「知的で聡明だ」

「いえいえ」

美紀はアイスコーヒーを持って火剣のテーブルに移動した。

「ここいいですか?」

「ほう、生贄にされたか」

「違いますよう」美紀は笑った。

「大の男が3人も揃っていて、仲間の美女を生贄にするとはな。そんな根性の野郎どもに何ができるっていうんだ」

賢吾と激村と短ライは小声で作戦会議をしている。

「ほう、無視か。虫虫大行進を熱唱するぞ。むしむしだいこーしん!」

「何ですかそれは?」美紀が真顔で聞く。

「知らないのか虫虫大行進。昭和40年代の番組だ」

「生まれてませーん」

火剣と美紀が盛り上がっているのを見て、賢吾たちは安心して話を続けた。

「プレゼンでもそうなんだが、あらかじめ出そうな質問を書き出そう」激村がメモ帳とペンを出した。「そして回答を用意しておく。すべての質問に即答されると相手は怯むからな」

「ところで美紀は、賢吾の奥さんは見たのか?」

「電話で話しただけです」

火剣の声が嫌でも聞こえて気になる。

「賢吾の奥さんは22歳だぞ」

「嘘」

「俺様が嘘をついたことがあるか?」

「はい」

「おおおおおおお!」火剣は立ち上がって踊った。「白鳥の湖」

「はっ?」美紀が焦る。

席に戻った火剣は、笑顔で言った。

「まさに年の差婚だ」

「院長はいくつなんですか?」

「とう年取って37歳だ」

「何だ、まだ若いじゃないですか」

「違う。十年取るんだから47歳だろ。まさに年の差婚だ」

美紀は唇を結んだ。自分とも20歳近く離れていることになる。

「火剣さんは奥さんに会ったことがあるんですか?」

「あるぜ。天使のように可憐な美女だ」

「へえ」美紀は興味を持った。

「美紀には負けるが」

「よく言いますよ」美紀は顔を紅潮させた。「奥さんにも同じこと言うんでしょう?」

「それが人情のキビダンゴというもんよ」

「キャハハハ!」

賢吾は美紀と火剣のほうを向いた。

「何や、盛り上がっているやないか」

不満な顔の賢吾に、激村が言った。

「彼女が体を張ってくれているんだ」

「けなげだな」短ライも感心する。

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