《MUMEI》 作戦会議 73人が心底困っている顔をしているのを見て、美紀は賢吾に言った。 「あたしが向こうのテーブルに行きましょうか?」 「それは名案やけど、美紀に悪いやないか」 「あたしは平気です。役に立ちたいし、ちゃんと準備しないとダメですよね、記者会見で発表する順番とか」 「君は本当に素晴らしい」激村が心の底から誉めた。「知的で聡明だ」 「いえいえ」 美紀はアイスコーヒーを持って火剣のテーブルに移動した。 「ここいいですか?」 「ほう、生贄にされたか」 「違いますよう」美紀は笑った。 「大の男が3人も揃っていて、仲間の美女を生贄にするとはな。そんな根性の野郎どもに何ができるっていうんだ」 賢吾と激村と短ライは小声で作戦会議をしている。 「ほう、無視か。虫虫大行進を熱唱するぞ。むしむしだいこーしん!」 「何ですかそれは?」美紀が真顔で聞く。 「知らないのか虫虫大行進。昭和40年代の番組だ」 「生まれてませーん」 火剣と美紀が盛り上がっているのを見て、賢吾たちは安心して話を続けた。 「プレゼンでもそうなんだが、あらかじめ出そうな質問を書き出そう」激村がメモ帳とペンを出した。「そして回答を用意しておく。すべての質問に即答されると相手は怯むからな」 「ところで美紀は、賢吾の奥さんは見たのか?」 「電話で話しただけです」 火剣の声が嫌でも聞こえて気になる。 「賢吾の奥さんは22歳だぞ」 「嘘」 「俺様が嘘をついたことがあるか?」 「はい」 「おおおおおおお!」火剣は立ち上がって踊った。「白鳥の湖」 「はっ?」美紀が焦る。 席に戻った火剣は、笑顔で言った。 「まさに年の差婚だ」 「院長はいくつなんですか?」 「とう年取って37歳だ」 「何だ、まだ若いじゃないですか」 「違う。十年取るんだから47歳だろ。まさに年の差婚だ」 美紀は唇を結んだ。自分とも20歳近く離れていることになる。 「火剣さんは奥さんに会ったことがあるんですか?」 「あるぜ。天使のように可憐な美女だ」 「へえ」美紀は興味を持った。 「美紀には負けるが」 「よく言いますよ」美紀は顔を紅潮させた。「奥さんにも同じこと言うんでしょう?」 「それが人情のキビダンゴというもんよ」 「キャハハハ!」 賢吾は美紀と火剣のほうを向いた。 「何や、盛り上がっているやないか」 不満な顔の賢吾に、激村が言った。 「彼女が体を張ってくれているんだ」 「けなげだな」短ライも感心する。 前へ |次へ |
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