《MUMEI》 作戦会議 9メニューで叩かれたくらいでは火剣は黙らない。 「短ライは短気だから、次は激村の話だ」 「短気なんですか?」美紀が心配顔で聞いた。 「短気ライオンというくらいだからな。実は俺様とは幼馴染なんだ」 「あ、そういう関係・・・」 火剣はビールをグイグイ飲んだ。 「うめえ。で、短ライか。撮影現場ではよくスタッフが投げ飛ばされているな」 「嘘」 「助監督や俳優にバックドロップやジャーマンスープレックスが火を噴いている」 「短ライ監督のことは短気だから言わないんじゃなかったんですか?」 美紀の言葉を聞いて、火剣は短ライを見た。やはり睨んでいる。 「お、そうだった。君は頭いいな。さてはモスクワ大学の教授を密かに狙っているだろ」 「はい?」 「何がはいだ。ウキョースギシタと呼ぶぞ」 激村と賢吾が短ライに言った。 「気にするな。話を進めよう」 「あいつは何を言うかわからないな」短ライが呟く。 「だから記者会見に連れて行けるわけがない」 「で、激村創。こいつは同じ会社の同僚だったんだが、身長198センチ、体重135キロの巨漢のくせに、よく宙を舞うんだ」 「やっぱり大きいですね。火剣さんの身長は?」 「俺様は195センチだ」 「大きいですね」 「美紀は?」 「あたしは162センチです」 「ちょうどいいな」火剣はビールを飲みほす。「うめえ。スタイルは抜群、顔は文句なく美人でかわいい。かなり魅力的なヒロインだ」 「よく言いますよ」美紀は照れた。 ウエートレスが通りかかると、火剣はジョッキを上げた。 「大ジョッキだ」 「ありがとうございます」 「強いんですね」美紀は笑顔で言う。 「おっと、話が逸れた。宙を舞う話だ」 「宙を舞うって、どういう意味ですか?」 「気に入らないことがあると、すぐにドロップキックやジャンピングニーパット、時にはフライングボディーアタックが炸裂するんだ。美紀も気をつけたほうがいいぜ」 激村が火剣のほうを向いている。 「嘘ですね」美紀が笑った。 「バッファロー! 嘘じゃねえ。俺様はいつでも真実しか語らないことで有名なんだ」 「そんなしょっちゅう暴力をふるったら警察に捕まっているはずです」 ピキーン! 火剣の目が光り輝く。 「そう思うだろ。実は昔、パワハラ上司にマジギレした激村は台車で上司を殴打して病院送りにし、ついに御用だ」 「またまたあ」 「本当の話だぜ。でも激村は暴力をふるったという自覚がない。台車で殴打というのは、激村の頭の中じゃ、プロレスの場外乱闘で、イスで相手レスラーの脳天を叩く感覚でしかない」 「え?」 意味がわからず小首をかしげる美紀に、火剣は危ない笑顔で続けた。 「つまりよ、激村はリング上と私生活の区別がついてねんだ。前にもウエーターにアルゼンバックブリーカーを決めたことがある」 「アルゼンチンバックブリーカー?」 「背骨折りだ」火剣は得意満面に言った。 「ダメですよそんなことしちゃあ」 「激村に言え。でも本人はプロレスの試合と思っているから、自分は非暴力主義者だと言っている。果たしてこれほど危険な男がこの世にいるだろうか・・・NO!」 至近距離まで激村が来ていた。火剣の脳天に思いきり手刀! 「だああああああ!」 「いい加減しろ」 前へ |次へ |
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