《MUMEI》 作戦会議 10ウエートレスが大ジョッキを運んで来た。 「お待ちどう様でした、ごゆっくりどうぞ」 火剣はビールをグイグイ飲んだ。 「今手刀で済んだのは美紀のおかげだ。普通ならこの皿の上に脳天から落とされているぜ。ジャンピングパイルドライバーで大流血」 「嘘」美紀は焦った。 「命の恩人だ」 「そんな」 美紀のおかげで賢吾たちの作戦会議もかなり進み、大事なことはほとんど話し合うことができた。 美紀はアイスコーヒーをストローでひと口飲むと、小声で聞いた。 「火剣さん。白茶熊院長って、お金持ちなんですよね?」 「そりゃあ小説で稼いでいるからな。でも一部界隈の変態相手だから、名前は有名じゃねえだろ」 美紀の顔が曇る。 「ヘンタイ?」 「変態は言い過ぎだな。じゃあ、鬼畜」 「もっと酷くなってますよ」 「俺から言わせればすぐに全裸にするのは良くねえ。最後の一枚は最後まで取ったらダメだ。賢吾にはチラリズムマジックがわかってねんだ」 「火剣」激村が睨む。「レディの前だぞ。セクハラはやめろ」 「セクハラは賢吾に任せる」 「誤解を招くことを言うのはやめい」 美紀は、書店で立ち読みした、白茶熊賢吾と同姓同名の官能小説を思い出していた。 (まさか) 火剣は酔っ払っている。 「俺様はヒロイン研究家だからな。やはりヒロインはそう簡単に犯されちゃダメなんだ」 「何の話をしているんですか?」美紀が睨む。 「小説の話だ」 「小説?」 火剣は賢吾たちを見た。 「あいつらは全員俺様の弟子みたいなもんだからな」 「全然違う!」一斉に否定した。 美紀は賢吾を真顔で見た。 「院長。もしかして、官能小説とか書いてますか?」 「とかじゃなくて官能小説しか書いてねえだろ」火剣が笑う。 「そんなことない」激村が否定した。「賢吾はいろんなジャンルのものを書いている」 短ライが美紀を睨む。 「そもそも官能小説と聞いて目くじらを立てるというのは、ちょっと違うぜ」 「あ、いえいえ。目くじらなんか立ててません」 「まあええわ」賢吾が口を開いた。「別に隠すつもりはなかったんやけどな。最初、無名の頃はまともな作品書いても売れんから、万国共通のテーマに走った」 「エロスだ」 「火剣は黙ってろ」 「うるせえ」 賢吾が話を続けた。 「最初はヤバイ、きわどい小説で売ろう思ったんやけど、このジャンルは奥が深いことに気づいたんや。ただやらしいこと書けば受ける思ったら大間違いのコンチキタローや」 「賢吾。せめてコンコンチキにしといてやれ」 「酔っ払いは黙っとれ」 前へ |次へ |
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