《MUMEI》
作戦会議 11
賢吾が熱く語る。

「ワイは途中で考え方を変えたんや。よし。このジャンルを極めようと。ただヤバイだけじゃアカン。そして狙い目は実は女性読者や」

「女性?」

目を丸くする美紀に、火剣は怪しい笑顔で言った。

「何驚いてるんだ。ネットが普及してからは女子も好奇心でSM小説とか読んでるんだぜ」

「嘘」

「俺様が嘘をついたことがあるか?」

「はい」

「おおおおおおお!」火剣が席を立って踊る「欲望の湖・・・」

激村が飛んだ。ドロップキック!

「がああああああああああ!」

「・・・嘘」美紀は硬直した。火剣は嘘つきではなかった。

火剣がイスでKOしている間に、賢吾は話を結んだ。

「男は映像に走るから動画をよく見るが、女性は想像力豊かやから、小説のほうを好む傾向にあるんよ。要は推理小説であろうと、官能小説であろうと、魅力的なキャラと、高いストーリー性と、深いメッセージが大事なんよ。官能小説をバカにしたらアカン。どんなジャンルでも描写と表現力と想像力の勝負や」

火剣が起き上がった。

「おお、夢を見ていた」

「どんな夢ですか?」美紀が聞く。

「記者会見が失敗した」

「くだらねえ」短ライが睨む。

「俺が乱入したからだ。ガハハハハハハ!」

「正夢にしたらあの世に送るぞ」

激村が言うと、火剣が笑顔で言った。

「聞いたか美紀。あれで非暴力主義者とか言ってるのはおかしいだろ。だから人から矛盾帝王と呼ばれているんだ」

「火剣さんが言ってるだけでしょ」

「何で知ってる」

賢吾は伝票を持って立ち上がった。

「火剣は美紀に任せよう」

「また生贄にされたな」

「いいえ、自発能動です」美紀は火剣を睨んだ。

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