《MUMEI》
佐伯家の過去
イズミと優香が、一緒にシャワーを浴びてた

……俺、珈琲を入れたんだ
一本、吸わせてもらっていいか?

タバコを見せ、雅人さんが言ったんだ

…灰皿なんて無いから
適当な皿を出し

俺にもください

雅人さんに、そう言ったんだ

…雅人さんが火をつけてくれた…

…マルボロ…
吸い込むと、少しクラクラした…

………怒ってないのか?

雅人さんに聞かれたんだ

…何を?…

……イズミを縛ったことだ
……興奮したでしょ?
俺の大切なイズミを…縛って…

…ああ……物凄く、興奮した…

…イズミも…興奮したみたいだよね?

笑顔で雅人さんに言ったんだ

………琢磨…優香を好きか?

雅人さん、真顔で聞くんだ
…うん……愛しく思う…
大好きだよ…
…でも、イズミが一番しっくり来るんだ…

…わかってる……
…優香を頼む…

………………意味がわからないよ…

……みんなが揃ったら、話すよ…
…優香を…頼んだぜ…

そう話した雅人さんは
2本目の、タバコに火をつけたんだ

………

イズミと優香がシャワーから戻って来た…

兄さん…タバコ?…

髪に匂いが付いちまうか?
………琢磨に、話すの?

ああ……話さなきゃ…ならない

そして、雅人さんが、話し始めたんだ

アメリカの、ロックウェルは、俺の身内の会社なんだ
佐伯の子会社という形になってるが…
…資本はロックウェルが勝ってる…
…父が佐伯に養子縁組するさい、不可侵条約を結んだんだ…

お互い、資本には干渉しないってな…

佐伯は、ロックウェルの持つ特許品の、
アジア全土を一手に請け負う

ロックウェルは、アジア進出出来る…

お互いの利益が合致したんだ

…母は、横川家と、養子縁組した…

横川家は、ニューヨークにも道場を持つ、護身術を主体とする、武術家なんだ…
俺も、優香も、幼い転がら習わされてたんだ…

……身を守るためにね…

佐伯は、いや、佐伯の中の大多数は、ロックウェルを我が物としようとしてた…
…いつか、抗争になる

………そして、それが現実になったんだ

アメリカに居る、俺の身内を切り崩しだしてね…

…日本マネーと、アジアの女を使い…買収していったんだ…

そこまでは…良しとするさ………
…父を………母を…
………生きてるとは、思ってなかったよ…

………俺と優香は、復讐するために、日本に戻って来たんだ…

…………会社を、取り戻した今…
無益なことだとは、わかってる…

…………優香…琢磨と生きろ…
……あとは、俺ひとりで…事を進める

雅人さん、そう、話したんだ

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