《MUMEI》
就職?
「あんた、ただの受験生ってわけじゃなさそうだな。見た目からして」
ユウゴはゆっくり立ち上がる。
サトシも痛そうに顔をしかめながら起き上がった。
 男は鼻で笑うと、再び銃口をユウゴに向けた。
「まあな。そこら辺に転がってるような連中とは経験が違う」
「へえ。やくざか何かか?」
「……そんなとこだ。なあ、おまえ」
「なんだよ?」
「お前はなかなか使えそうだ。どうだ?試験を受けてみないか」
「……つうことは、あれか。あんたは受験生じゃなく試験官ってわけ?」
「そういうことだ」
男は凄みのある笑みを浮かべてユウゴたちを見た。

 彼の持つ銃は、まっすぐにユウゴの頭部を捉えている。
ユウゴがどうするべきか考えを巡らしていると、横に立つサトシが顔を男に向けたまま小さく呟いた。
その声を聞き、ユウゴの次の行動は決まった。

「この俺にプロジェクトを運営させてくれるって?」
「ああ。試験に受かればな。なんなら、そっちのガキも受験させてやるぜ?年齢制限はないからな」
「だってよ。サトシ、どうする?この際、就職しちまうか?」
ユウゴはヘラッと笑ってサトシを見た。
サトシは腕を組み、考えるような仕草を見せる。
「それもいいかな」
「ほう。受けるか?試験を」
男はさらに凄みを増して、ユウゴたちにプレッシャーをかけてくる。

 二人は相談するように視線を合わせ、やがてニッと笑って言った。
「受けるわけねえだろ!!」
同時に、二人は駆け出した。
「馬鹿な奴らだ」
男はそう言うと、迷うことなくユウゴに向けて引き金を弾いた。

カチっという小さな音が走るユウゴの耳に届いた。

「なっ…!」
男は目を見開き、迫り来る二人と自分の手にある銃とを見比べている。
「馬鹿はお前。弾の数くらい確認しろよ。なあ、サトシ?」
「人の物を盗ったりするから、こうなるんだよ」
二人は走りながら地面に落ちていた石を拾うと男に投げ付けた。
「……くそ!」
男は両手で顔を庇う。
その隙に、サトシはがら空きになった腹部へと頭から突っ込んだ。

 サトシの勢いに負けた男が仰向けに倒れると、すかさずユウゴが銃を突き付けた。
「形勢逆転。さようなら、試験官さんよ」
 男の顔を覗き込みながら冷たく笑うと、ユウゴは何か叫ぼうと口を開いた男の眉間に弾を撃ち込んだ。

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