《MUMEI》
怒りのメッセージ 2
柄田昇は会社を解雇された。

頭痛薬を飲んでも頭の痛みが治まらないので、病院へ行った。血圧を測ると、上が200の下が140だった。完全な高血圧症だ。かなり危険な数値である。

「高いですねえ」医師は顔を曇らせた。「前からこんなに高かったですか?」

「いえ、130の80くらいでした」

会社が倒産して、失業してから心労が蓄積し、心身にストレスが溜まり、血圧が急上昇してしまったのだろうか。

「この数値見たら返せませんよ。検査しましょう」

「はあ・・・」

検査はお金が高い。その心配がさらに血圧を上げてしまう恐れがある。

胸のレントゲンを撮り、心電図を測定した。心肥大と診断された。不整脈の兆候も見られる。

「絶対通院してください。これを放っておいたら大変なことになりますよ。ところでお仕事は何を?」

「あの、失業中・・・いや、求職中です」

「肉体労働は絶対にやめてくださいね」

「・・・はい」

しかし、特別な技術や経験がない男性は、それなりの金を稼ぐとしたら、肉体労働しかなかった。

柄田は医師から止められていた肉体労働のアルバイトをして通院代を稼いだ。引越しのアルバイトだ。死ぬ思いをして重い家具や多くの箱を運び、また通院した。

無理をしたために病気は悪化した。

心臓という命に関わる場所の病気なのだ。医師から重労働は止められているのだ。

柄田は思いきって市役所に相談した。自分のような人間のために安全網というのがあるのではないかと考えた。

ところが。

「医師の診断書はありますか?」

「ありません」

「では、医師の診断書をもらってください」

柄田は笑顔で言った。

「診断書を書いてもらうのに4000円くらいかかるんです。そのお金すらない状態なんです」

「病気に関しては医師の診断書がないとダメですよ。診断書見て、主治医からも直接聞きます。働けないくらいの重症なのかどうか」

柄田が俯くと、職員が質問した。

「医師は働いたらダメだと言いましたか?」

「・・・いえ、肉体労働はダメだと」

「ご両親はいます?」

「いません」

「ご兄弟は?」

「いません」

「車は持ってますか?」

「いえ」

「家は借家ですか?」

「はい」

柄田の表情が沈む。

「借金はありますか?」

「あります」

「じゃあ全額返済してください」

柄田は顔を上げた。

「いや、そんなお金はないですよ」

「じゃあ破産宣告の手続きをしてください」

「破産?」

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