《MUMEI》
怒りのメッセージ 4
柄田昇は、家に帰ると、テレビをつけた。もうすぐ記者会見が始まる模様。何の記者会見かはわからなかったが、チャンネルを替えずに、ぼんやりと見ていた。

多くの記者が集まっていた。先日、白茶熊賢吾がテレビで暴れて退場になったことが影響している。

それに映画監督の丹危雷音と漫画家の激村創も同席するということで、各社は優秀な記者を現地に向かわせた。

露坂美紀も自分の部屋でテレビを見ていた。我がことのように緊張していた。

ざわめきが起こる。

激村創の姿が見えた。198センチ、135キロとなると、山が動くような迫力がある。しかも悠然と大股で歩くから、余計に絵になる。

激村の後ろには白茶熊賢吾。一斉にカメラの音が鳴る。その後ろに丹危雷音。険しい表情だ。そして最後に弁護士の強豪大兵。

4人は席に着いた。強豪弁護士がマイクを握った。

「最初に白茶熊賢吾から挨拶があります。そのあと、質疑応答に移ります。よろしくお願いします」

賢吾がマイクを握った。

「おばんでやんす」

記者たちは苦笑する。

「まあ、前置きは省くわ。ワイが昔から水面下でやって来たことを最初に紹介します。影でコソコソと良いことをしてたんや。それはな。信頼してる区議会議員や市議会議員に、お金に困っている人から相談が来て、一生懸命頑張っているのに、どうにもならん人がいたら、こっちに回してくれゆうて、頼んだんや」

記者は一言も聞き漏らすまいという真剣さで話を聞いた。

「ギャンブルや風俗にハマって金がなくなったゆうのはダメや。そういうお人は100万円渡しても一夜でなくすからな。せやから条件は、あくまでも今まで一生懸命頑張って来たけど、どうにもならん人。そういう人のためなら力貸すぜい、ゆう話や」

テレビの前の柄田昇は、目を見張った。この人は何を話そうとしているのか。

「ワイは自慢やないけど年収は1億円ある」

会場は少しざわめいた。

「そんな大金もらってて、何で国会議員や首長をボロクソ批判するかって? 確かにこんなにもらってる政治家はおらんな」

賢吾は笑うと、話を続けた。上がっている様子は微塵もない。普段通りの喋りだ。

「ワイは貧困で地獄を見た男や。せやから年収300万円あれば、かなりリッチな暮らしが出来る。今は独身やないから、少し金かかるが、それでも年間500万円あれば裕福な暮らしが送れるな」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫