《MUMEI》
怒りのメッセージ 6
強豪大兵がマイクを持った。

「では、何か質問はありますか?」

いよいよ質疑応答に入った。一斉に手が上がった。賢吾がきさくに言う。

「いちいち社名言わんでもええよ。懇談的に話そう」

「ジャンヴァルジャン基金というのは、誰でも参加できるんですか?」

「ええ質問や。さては高校のとき弁論大会で優勝したやろ?」

笑いが起きた。

「いえいえ」

「どなたでも参加できます。でも一応数えるスタッフが大変やから、ひと口1000円や。10000円にするとな、7000円払いたい人が払えんようになると、これはマイナスやから、ひと口1000円にしました。本当は1円から集めるのが筋かもわからんが、ご理解とご協力のほどよろしゅう」

次々に手が上がる。強豪弁護士が差した。

「政治家も参加できますか?」

「政治家は参加する必要ないやろ。政治家には政治家の役目があるからな。例えば防災のために老朽化した橋や建物を補修するとか、そういう何兆もかかることは、政治家がやるしかあらへん。政治家には、政治家だからこそ出来ることに専念して欲しいな」

記者は意外な顔で聞いた。

「先ほども区議や市議と協力しているようなことをおっしゃっていましたが、白茶熊先生は、別に政治家を目の仇にしているわけではないんですね?」

「国民の命と生活を守るのが政治家の仕事や。民衆の幸福を真剣に願い、365日東奔西走している本物の政治家は、もちろん尊敬するし、支援するよ。しかし単なる権力欲が目的のな、地球の平和や庶民の生活を脅かすような偽物には厳しいよ。絶対認めん。本物の政治家しか相手にせん。偽物はいらん」

「例えば偽物の政治家は誰ですか?」

賢吾は笑った。

「その手には乗らんよ。固有名詞挙げてどないすんねん。暗殺されたら、あんさん責任取れまっか?」

「では本物の政治家は?」

「ええっちゅうねん」

ここで激村創がマイクを持った。

「そもそも、その政治家が本物か偽物かを見抜くのはマスコミの役目ではないでしょうか。ペンの戦士である皆さんに期待することは大きい。どうか、偽物は無視し、本物の政治家に光を当ててください」

激村の目が怖い。記者たちは一瞬戸惑った。

「一生懸命頑張っているというのは、どこで判断するんでしょうか?」

「話せばだいたいわかるが、万が一詐欺が紛れ込んでも、それはしゃあない。疑い過ぎてたらキリがないしな。政治家が信頼出来て、社会保障や安全網など、いわゆる公助が完璧なら、ワイの出る幕なんかないねん。しかし、今公助の危機やろ。せやから共助を拡大して、万が一に備える。公助の充実は日本が世界に誇る政策やないか。それをあんたらマスコミが騒ぐもんやから、多くの人が肩身の狭い思いをしてる。わかってんの?」

いきなり賢吾が仕掛けて来たので、記者たちの目も鋭くなった。

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