《MUMEI》
怒りのメッセージ 7
「それはつまり、今の日本の閉塞感を生んだのはマスコミの責任だとおっしゃりたいのですか?」

「マスコミの責任だろ」短ライが言った。

「国民は悪くないと?」

「バカな政治屋と無責任なマスコミのせいだ!」

短ライの乱暴な言葉を、激村がフォローした。

「逆にいえば、今の日本の閉塞感を打ち破るのは、マスコミの使命とも言えると思う。良くも悪くも日本列島は狭い。5割の国民は、残念ながらマスコミに影響を受ける。マスコミが良く変われば日本も良く変わる。今の日本が良くないとしたら、それはマスコミの責任が大きいと言えるかもしれない」

記者たちの顔が強張っている。

「あなたたちも漫画家であり、映画監督であり、作家です。一般人ではありません」

「もちろん大きくジャンル分けすれば、ワテらもマスコミに入る。そういう気持ちで語ってるんや。メディア戦略が上手いパフォーマンスだけの政治屋なんか無視して、本物の政治家にカメラ向けなはれ」

短ライが激しく言葉を叩きつける。

「国政選挙なんか、毎回マスコミの勝利だな。マスコミが勝たせたいところを確実に勝たせているな」

「どういう意味ですか監督?」

「そのままの意味だ。公平に全党を平等に紹介するなんてことは、ただの一度もねえだろ。バレてんだ」

会場がざわめく。

「暴言ですね!」

「言葉を慎んでください!」

「何が暴言だあ!」短ライが絶叫した。「有名な政治屋が今の俺の何億倍許せない大暴言吐いてもテメーらは○○節が炸裂とかお茶濁してチヤホヤしてんじゃねえか! 無名人だと暴言で有名人だと○○節かあ! ふざけんじゃねえぞこの野郎!」

記者たちは蒼白になった。

「何だ、その顔は? マスコミはマスコミを批判する人間を絶対に許さないんだろ。いいぜ、俺と戦争してもいいという度胸のあるヤツはいるか? 俺はメチャクチャ性格悪いぞ。少し頭もおかしいからな。ばうううううううううう!」

いきなりマイクに噛みついて目を丸くしながら叫んだ。記者たちの額に汗が光る。

「野蛮人か」賢吾が短ライを止めた。

「ほかに質問はありますか?」強豪大兵が涼しい顔で聞く。

「経済成長についてどう思いますか?」

「経済成長は大事やけどな。各国、50年間経済経済経済、軍事軍事軍事って、それが正しいと信じて突き進んで来て、世界がどうなった?」

皆静まり返って聞いていた。

「経済経済経済って突き進んで来て今の世界の状況があるんとちゃうの? そろそろ発想の転換が必要なのとちゃうか」

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