《MUMEI》
怒りのメッセージ 9
激村は龍のような目で記者席を見回した。

「権力の魔性に犯された輩とは断固戦う。迷わず叩き潰す。偽物を絶賛する愚かな評論家も同罪だ」

記者たちは思った。白茶熊賢吾も変わり者だが、この激村創はもっと危ない。触らぬ神に何とやらで、あまり触れないほうがいいと考えた。

会場が静かになる。強豪大兵は皆に聞いた。

「ほかに質問はありますか? なければこれで終わりますが」

「このメンバーで新党を結成するというお考えはありますか?」

「1000%ありえん」賢吾が即答した。

質疑応答が終わり、記者会見が終了すると思ったが、賢吾がマイクを持った。

「まあ、いろいろ語ったがな。結論は、本物に期待とゆうことや。偽物が威張って目立って、本物が陰に隠れているのは本物の責任でもあるんよ。本物は打って出なきゃアカンよ。勝負なんやから。記者もそうや。ここにいる全員が本物のペンの戦士だと思ってる。ペンを握るということは、それだけ重大な使命を帯びてるわけやからな。部数増やすのも大事やけど、もっと大事なもんがあるはずや」

賢吾の目が危なく光る。

「心臓病や腎臓病など重い内臓疾患。あんた健康な人と見分けつくか?」

いきなり指差された記者は慌てた。

「いえ」

「わからんよ、医者でもない限り。どれだけ周囲の無理解で苦しんでるか」

テレビの前の柄田昇は、目を見開いて賢吾を凝視していた。

「重病やから無理して働かないで治療に専念したほうがええんよ。しかし病院行く金がない。こんな悲惨な話、あんたら好きか?」

柄田は信じられない光景を見るような気持ちだった。思わず膝が震えた。

「病気じゃしょうがないやんかっちゅう、どんまい精神が欲しいよ。病気の人は病気を治すことだけに専念させたい。病気も大変やけど、治療しなきゃ死んじゃうのに治療できない。こんな悲劇みんな好きか? 公助は楽に見えるかもわからんが、人を羨ましい思ったら終わりよ。わからんやないか、心の中覗けるわけやないし。その人がどれだけ苦しいか。羨ましいなんて思ったら天は黙ってないやろな。脅しじゃなく、あっそう、そんなに羨ましいならあなたも重症者になるかって、天は冷酷やぞ。実態知らんでもの語るのはテレビの責任やろな。国民に間違ったイメージを植え付けたのはアホなテレビとアホな政治屋とアホな評論家やろな。何兆もかかるって、そりゃ医療費はかかるよ。機械で生きてる人は年間500万くらい行く。個人で払えるわけない。でもテレビで何兆だ何兆だって。その言葉がどれだけ心に突き刺さってるか、考えたことある?」

強豪が切った。

「時間が来ましたので、これで記者会見を終わります」

柄田昇は、衝撃的感動を覚えていた。白茶熊賢吾。この人には会わなければいけないと直感がそう教えていた。

美紀は記者会見が終わってホッと胸を撫で下ろしていた。荒れた記者会見になるかと心配していたが、何とか無事に終了した。

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