《MUMEI》

…なるほどね…

見えてきたな……

俺、尾行してたんだ

奴が車で動くから、タクシーを慌てて捕まえて

運転手さんに、尾行ですか?…任せてください

運転手さん、ノリノリだった

そして、運転手さんから、良い情報を聞いたんだ

奴が入って行った雑居ビルは、よく、タクシーで女の子を迎えに行くそうなんだ…
…デリヘルだろうって、運転手さんが言ってたんだ

そして、暫く張り込みを続けたんだ…

…たしかに、女性の出入りが多い…

空きテナントばかりのビル…
看板は、町金ともうひとつ、よくわからない会社だけだった…

多分、この小さなビルだと、ひとつの階にひとつのテナントだろうな…
看板の無い5階と6階にエレベーターが止まり
女の子が乗り降りしてるようだった…

ポストを見たかったんだけど…
防犯カメラに映りたくないからな…

…ここからだと、少し階段を上がったとこにエレベーターが見える…

…だけどビルの窓から丸見えだから…
…同じ場所に、居続けるのは危険だよな…

また、歩きだし、移動したときだった

ビルから女性が出て来たんだ

…また、困ったら来いよな
男の声

二度と来るもんか!

女の声

…なぁに、すぐ来るさ

ざけんなばか野郎!

……喧嘩か?

俺、その女に、声を掛けてみる事にしたんだ

駅に向かって歩いてる、その女性に

ねえ、ちょっと話を聞かせてくれないかな?

そう、声を掛けたんだ

…ナンパ?…うざいんだけど…

違うよ、

キャッチも用無いわ

だから違うって、あのさ…
…じゃぁ何よ…

…あのビルの事…教えて欲しいなって…

………アンタ…誰?

…名乗らなきゃ…ダメかな?

……………いいわ
お酒オゴって、ムシャクシャしてるの…

怒り顔で、そう言った女に
…あら…ナンパされちゃうんだ、ミオ

アサミの声がしたんだ!

…アサミ……

久し振りだね…車なんだ…来ない?…送るよ

アサミがそう言ったんだ

何で…アサミがここに…

………

ちょっと高級な、寿司屋に入ったんだ…

イズミ、車を乗り換えて来たんだって
ミニを、アーケードモールに停め、
俺の8人乗りのハイブリットで来てた…

佐久間も一緒だった…

……なんとなく、わかったわ…
…貴女、写真の子でしょ?
ミオが、イズミに言ったんだ

…有名人ね…わたし…

…働くの?…
…止めときな、あの店だけは…

…デリなの?

…最悪よ…もっとマシな風俗、いくらでもあるわ…
…金、なんとかして、逃げた方がいいわよ…

…ミオが、イズミに、そう言ったんだ

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