《MUMEI》
大河の流れ 8
テレビを見終わって、二人が出かけた先は居酒屋だった。ミーティングと称しての飲み会である。

「これで赤坂の高級料亭行ったら週刊誌が喜ぶやろな」

「ダメですよう」

居酒屋に到着すると、賢吾はレジのところで言った。

「予約した白茶熊です」

「どうぞ、お二階のお座敷へ。もうお一人様来ておりますよ」

「誰かな?」

「大きい人でした」

「大きい人・・・激村か火剣やな」

賢吾と美紀は二階へ上がった。

「お、火剣か」

「こんばんは」

美紀が笑顔で挨拶すると、火剣は彼女のファッションをまじまじと見た。赤いTシャツに白のショートスカート。サンダルを履いてきた彼女は裸足になった。嫌でも脚が強調される。

「ほう、いつもスーツ姿だからわからなかったが、美紀は結構美脚じゃねえか」

「もう」美紀は赤い顔をして脚を触った。「恥ずかしいですねえ、ストレート過ぎますよ」

「俺様はいつでもストレートなんだ。どっかの激村みたいに回りくどくねんだ」

「誰が回りくどいって?」

「わあああああ!」

激村創本人が階段を上がってきた。

「一度入院しないとわからないタイプか?」

「聞いたか美紀。これで憲法厳守を掲げているんだぞ、矛盾してると思わねえか」

美紀が小首をかしげて聞いた。

「どう矛盾してるんですか?」

「憲法で保証されている言論の自由を暴力で妨害する男だぞ」

「言論の自由と暴言を混同してはならない」

「混同?」火剣は立ち上がると、いきなり踊った。「君はあ、足でピアノを弾いたことがあるかあ」

賢吾が笑う。

「美紀がいなかったらドロップキックが火を噴いてたやろうな」

「火剣さん、あたしに感謝してください」

「言うじゃねえか」火剣も喜ぶ。

火剣は一番奥のお膳の中央。まさに上座に陣取った。

美紀は火剣の近くにすわった。賢吾は美紀の真向かいにすわる。激村が美紀の隣にすわろうとすると、火剣が言った。

「テメーはもっと遠くに離れろ」

「うるさい。オレはどんな位置からでも貴様は射程内だぞ」激村は美紀の隣に腰を下ろした。

「美紀も気をつけろ」

「激村さんは女性に手を上げたりしません。火剣さんの暴言の止め役なんじゃないですか」

「ほう、どっちの味方だ?」

「激村さん」

「おおおおおおお・・・」

踊ろうとしたが、店員が料理やビールを運んで来たので、火剣は仕方なく席に戻った。

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