《MUMEI》
大河の流れ 11
荒れる飲み会に、清楚な水色のワンピースを着た爽やかな女性が姿を現した。

「遅れてすいません」

「おお、来たか」賢吾の表情がやわらぐ。

美紀は、見知らぬ女性を真っすぐ見ると、火剣の顔を見た。

「え、どなたですか?」

「何、まだ会ったことなかったのか」火剣が怪しい笑顔。「白茶熊れおんだ」

「嘘」

れおん。賢吾の奥さん。美紀は胸がドキドキした。

やや染めた長い髪。満面に笑みをたたえ、おしとやかな動作で賢吾の隣にすわった。

「天使みたいだろ?」

「火剣さん」れおんは照れた。「相変わらずですね」

「俺は真実しか話さない男で有名だ。お世辞は絶対に言わねえからな」

美紀とれおんは初対面。二人はほぼ同時に挨拶を交わした。

「露坂美紀です、よろしくお願いします」

「あ、れおんです。お話はよく伺っています」

火剣は、美紀とれおんの顔を交互に見ると、「ビリビリ、ビリビリ、ビリビリビリビリビリビリビリ」と意味のわからない擬音を呟いた。「バチバチバチバチバチ、バチバチバチバチ・・・」

激村が火剣を睨む。

「火剣。そのビール瓶で喉に地獄突きを食らいたいか?」

「食らいたくない、食らいたくない」首を左右に振りながら火剣は引いた。

れおんが来たので、メンバーが揃い、乾杯をした。

「れおんが来るまでに、かなり盛り上がってしまったぜ」火剣が笑顔で話しかける。

「遅れて申し訳ないです」

「いいんだ。それにしても、賢吾のような男が、れおんみたいな天使と結ばれるとは、本所七不思議の中に入れて、八不思議にしてもいいくらいだ。ガハハハハハ!」

激村が呆れた。

「賢吾。火剣がいるとミーティングにはならないな」

「ほう。テメーはどうして仲間ハズレを平気でやる。さては3年B組金髪先生を見ていないな」

「そんな番組はねえ」短ライが言った。

「ああ、金髪は短ライだったか?」

短ライは思い出したように話した。

「そうだ紗希、賢吾の原作を俺が映画化する話が出てるんだ。ヒロインを頼むぜ」

「え、賢吾さんの作品はちょっと・・・」

紗希がためらうと、短ライが言った。

「大丈夫だ。過激なヤツじゃねえ。かなりソフトな作品だ」

「どういう内容ですか?」

「女子大生が普通のエステと思って行ったら、実は拷問エステでな、水着姿でベッドに横になってたら、10人の男のマッサージ師が登場してよう、10人がかりで全身マッサージされちまうんだ」

「お断りします」紗希は即答した。

「いいだろ」

「嫌ですよ、どうせマッサージはガチなんでしょ?」

「当たり前だの明らかよ」

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