《MUMEI》
次の一手 6
家の外には、ピンクパンサーのテーマソングを口ずさみながら、賢吾の家のドアに忍び足で近づく怪しげな大男がいた。

「デン、デデン、デデデデデデデデデデーン、デンデデン」

火剣獣三郎はきょうも迷彩服上下だ。警察官が見たら白茶熊賢吾を狙うヒットマンと誤解したかもしれない。

「この俺様を仲間ハズレにして自分たちだけでコソコソと飲み会か? そんな器の狭い野郎共が世界平和だ? 貧困撲滅? 笑ってしまうね」

火剣はドアを開けようとした。開かない。

「鍵を締めやがったな。許せん」

チャイム。

「はーい」れおんが立ち上がった。

「誰だ?」

「まさか」

激村と紗希は心配顔でドアを見た。

れおんは外を確認すると、笑顔でドアを開けた。

「いらっしゃい」

「お、この部外者を熱烈歓迎する心の清らかさ。やはり賢吾にはもったいないな。もったいないオバケを呼ぼうか」

「何言ってるんですか、どうぞ」

れおんのキュートなスマイルに気を良くした火剣は、家の中に入った。

「お、いたいた、全員揃ってるな。誰一人としてこの俺様を呼ぼうという意見が出なかったんだな。薄情もんめ、カッコ美紀とれおんは覗く、カッコとじ」

「何しに来たの?」紗希があっさり言った。

「おう、逆に気持ちがいいな」火剣は紗希の服装をチェックする。「きょうは短パンガールか。少しは俺の意見を取り入れたか」

「関係ない!」紗希は目を剥いた。「自惚れるのもいい加減にしなさい!」

「うるせえ」

「やるの?」

紗希が拳を構えて立ち上がると、慌てて美紀が言った。

「火剣さんの席はここですよ。あ、飲み物はウーロン茶にしますか?」

「ビールだ」

「酒はない」激村が言った。

「じゃあコーラ」

「コーラ?」れおんが言った。「ちょっとコンビニで買って来ようか」

「その必要はねえ」短ライが火剣を睨んだ。「ウーロン茶にしろ!」

「うるせえ」

火剣はどっかりとソファにすわった。

「美紀が入れてくれるドリンクなら何でもいいぜ」

「はいはい」

美紀が立ち上がると、紗希が絡む。

「自己中はここにいるべきじゃないでしょ」

「俺は自己中じゃねえ。常に人類の幸福を願っている哲学するヒューマニストだ。ここにいる哲学を忘れた乱暴者とは違うぜ」

「酔っ払っているのか?」激村が睨む。

「大ジョッキを3杯飲んだだけだ。その程度では酔わねんだ。テメーら自分に酔ってる慢心軍団とは訳が違うのよ、ガハハハハハ!」

「慢心軍団?」れおんが笑顔で聞く。

「れおんと美紀を除いて、ここにいる全員だ」

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