《MUMEI》 次の一手 8「いずれにしても、皆気をつけたほうがいい」激村が真剣に言った。「世の中は善意の人だけがいるわけではない」 「そうやな」 短ライがウーロン茶を飲みほすと、席を立った。 「明日も早い。そろそろ解散するか」 「待てい!」火剣は焦った。「俺は来たばっかりだぞ」 「一人で屋台でも行って飲んでれば」 「じゃあ紗希も来い」 「はっ?」 皆は立ち上がった。火剣も仕方なく立つ。 「美紀、暇か?」 「いえ」 「どいつもこいつも冷てえな。そんなんで困っている人を助けられるのか心配だな」 火剣の文句を無視して賢吾が言った。 「そこまで見送ろう」 激村と短ライが外に出る。 「お邪魔しました」紗希もれおんと賢吾に挨拶して家を出た。 火剣と美紀も、賢吾とれおんと一緒に外に出た。 「では、ご馳走様でした」 美紀が言うと、火剣が聞く。 「何、俺様が来る前に何かご馳走が出たのか?」 「いえ、ジュースですよ」 「何だ」 「火剣」激村が睨む。「外に出たんだ。言葉には気をつけたほうがいいぞ」 「そうよ」紗希が笑顔で拳を鳴らす。 「うるせえ。激村はともかく、紗希なんか俺様が本気を出せば逆エビ固めで泣かしてやるぜ」 「やってみなさいよ」 「紗希さんにそんなことしたら、あたしが許しませんよ」美紀が笑顔で睨む。 火剣はいじけた顔をして歩いていった。 「いいぜ、いいぜ、どうせ俺様はヒールだ。そうやって排除の理論で頑張れ。腐ったみかんの方程式を肯定してろい」 火剣の姿が見えなくなると、激村と短ライも皆に手を挙げた。 「ちょっと二人で飲みに行く」 「何だ、火剣さんも連れてってあげればいいのに」美紀が言った。 「君は優しいな。良いことだ」 激村は言葉を置くと、短ライと一緒に夜の街に消えた。 (今がチャンスだ! あの大男3人がいなくなって白茶熊賢吾以外、女だけになった!) ずっとその時を待っていたヒットマンがすぐそばにいることを、誰一人気づいていなかった。 賢吾とれおんと美紀と紗希は、家の前で談笑していた。そこへ、見知らぬ若い男が、突如として現れた。 「白茶熊賢吾さんですね?」 「何や?」賢吾が身構える。 男はナイフを出した。美紀とれおんは目を丸くして蒼白になる。 「お命ちょうだいいたす!」 前へ |次へ |
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