《MUMEI》
次の一手 9
男がナイフの刃先を向けて賢吾に突進する。紗希が前に出た。男の手首にトーキック!

「あああ!」

手が折れたかと思うほどの衝撃に、男は思わずナイフを落とした。紗希は男の胸にサイドキック! ナイフを蹴って遠くへ滑らせると、空中でターンして顔面にバックキック!

男が倒れた。美紀とれおんは驚きの表情で紗希を見ていた。そこへ激村が激走してくる。ヒットマンは慌てて立ち上がって逃げようとしたが、激村が飛んだ。背中にジャンピングニーパット!

「があああ!」

前のめりに倒れる。短ライが怒りの形相で襲いかかる。男の髪を掴むと、電柱に頭部を叩きつける!

「鉄柱!」

男の額が割れて流血。ふらふらする男のバックを取った短ライは、構わずジャーマンスープレックス! 投げっ放しで地面に叩きつけた。

ヒットマンは仰向けに倒れてダウン。そこを火剣が135キロの全体重を浴びせたジャンピングエルボードロップ!

「げっ・・・・・・」

胸を押さえたまま男は動かなくなった。

「ヤベ、死んだか?」

火剣が焦る。賢吾はすかさず男の様子を見た。

「気を失ってるだけや」

「危ねえ、危ねえ」

美紀は早口に言った。

「あたし、警察に電話します」

「救急車もや」

「はい!」

美紀が警察と救急車を呼ぶ。れおんが心配した。

「過剰防衛にはならないよね?」

「なるぜ」火剣が真顔で言った。「紗希と短ライは完全に過剰防衛だな」

「はっ?」紗希が顔をしかめる。

「で、激村に関しては殺人未遂だ。正当防衛は俺だけだな」

激村が怒る。

「ジャンピングエルボードロップのほうが危険だろ。自分の体重を考えろ」

「そのセリフをそっくりそのまま返すぜ。テメーの巨漢で飛び膝蹴りされたら死ぬのがわからねえか。短ライも地面で投げっ放しジャーマンはねえだろ。紗希はプロの格闘技者だからキックを使うということは、凶器攻撃と同じに見られる」

美紀はムッとした顔で火剣に言った。

「でも、何もしなかったら刺し殺されたかもしれないんですよ」

「火剣」激村の目が危なく光る。「じゃあ、ジャンピングエルボードロップとジャーマンスープレックスとジャンピングニーパット。どの技が一番危険か、今から火剣の体で実験しよう」

「NO!」火剣は両手を出すと、首を左右に振り、「リックフレアー」と意味のわからないことを呟きながら後ろへ下がっていく。「間違えた。全員正当防衛だ」

短ライが紗希の肩を優しく叩く。

「紗希。でかしたぞ」

「いえいえ」

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