《MUMEI》
ドライバーセット
「よっしゃ。次は誰だ?」
目を見開いたまま、動かなくなった男を確認してユウゴは言った。
「お姉ちゃん、大丈夫かな?あれ」
「ユキナ?」
そういえば、すっかり彼女のことを忘れていた。

 ユウゴはさっき彼女がいたはずの場所へ目を向けた。
しかし、そこにユキナはいない。
「兄ちゃん、あっちだよ」
サトシが指差した方向にいたのは、複数の人間に取り囲まれたユキナ。
なぜかスーツ姿以外の人間にも襲われている。

「…全然、大丈夫じゃねえだろ。あれは」
ユウゴはその周りの人間を散らそうと銃を構えた。
しかし、撃つことができない。
「兄ちゃん?」
「……俺も弾切れ」
「うっそ。だって、僕があげたやつは?」
「いつの間にか無くなってたし」
「……じゃあ、どうすんの?素手で勝負?僕、自慢じゃないけど、弱いよ」
「ああ、弱そうだよな。別に銃や刃物じゃなくても武器になんだよ。ちょっと、待ってろ」
ユウゴはそう言うと鞄からドライバーセットを取り出した。

「ほら、プラスドライバー」
サトシは差し出されたドライバーを不満そうに見つめている。
「文句は一切、受け付けない」
ユウゴはキッパリとそう言うと自分はマイナスドライバーを手に持った。

「いいか?しっかり持って、まっすぐ刺せよ」
「…難しい」
「よし、行くぞ」
何か言いたげなサトシの視線に気付かない振りで、ユウゴは走り出した。

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