《MUMEI》
冷たい兄
                  
「宇理、陸斗先輩カッコ良かったね…」

「うん…」


体育館の入り口で兄のバスケを一緒に見ていた

親友の沙奈が遠慮がちに私に言う。

私も遠慮がちに返事をした。

沙奈も兄が私を嫌っている事は知っている。

それでも、私は兄が


好き。


兄に恋する妹なんて

気持ち悪いかもしれない。

でも好きになってしまったものは

仕方がないんだ…。



「どけ」



こんな一言で心臓が壊れるくらい
暴れている。

見上げるとお兄ちゃんが私を冷たい瞳で見下ろしていた。



「見てんじゃねぇよ。気色悪ィ」


「…あ…ごめんなさい…」

言って、教室に帰ろうと歩き出した。


兄の冷たい言葉も
もう慣れたはずなのに。

涙がこぼれ落ちるのを
必死に我慢している自分がいた。


「オイ」


ビクッ…

「は…はい…」

突然呼び止められて身体が反応してしまった。



「二度と来んな」



パリ…ン…

「……」


心が

砕け散った様な音がした。


「わかっ…た…」


お兄ちゃんを見る余裕も無い。

涙腺が完全崩壊していた。


嫌われているって言葉さえも

優しい言葉に聞こえる。


汚物

がふさわしい。


教室まで無我夢中に走った。

                  

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