《MUMEI》
兄の偽り
                  
いつもの様に体育館で

バスケをしてた。

相変わらずクソうるせぇギャラリー。

気が散る…。

ぎゃーぎゃー言う女は大嫌いだ。


シュートを決めて仲間とハイタッチして

タオルで汗を拭いていると

タオルの隙間から

妹の宇理の姿が目に映った。

宇理は俺を見ていた。


「チッ…」


何来てんだよ。

こんなとこ来んなよ…。

しかもそんな後ろの端っこで。


見に来てるのを

俺に気付かれたくないんだろ?


アイツは俺を怖がってる。


違うか…

怖がらせたのは俺自身か……。


俺が宇理に冷たい理由は

単純な事。

ガキみたいな理由で宇理に冷たくする。


宇理は無自覚なうえに無防備。

あんな良く出来た妹は

なかなか居ないんじゃねぇかってほど可愛い。

チビで細くて肌が綺麗で。

どこをけなせば良いのかわからねぇほど完璧に見える。


だから宇理を近くで見てられねえ俺。

それに

宇理には中学頃から仲が良い男が居て

そいつがまた爽やかで人気な奴。

確か…藤崎、だっけか?

噂で宇理はそいつと付き合ってるとか聞いた。

そんだけでイライラしてる自分。


藤崎とやらと仲良いし

兄妹だから常識的に恋愛出来ねえ。

俺のイライラはまずその2つ。


宇理への気持ちを消したい。


だから中学入学と同時に宇理に冷たくし始めた。

それが今ではもう最低な言葉を

連発してるのはわかってる。

宇理だって俺の目を見ようとしない。



「どけ」



宇理が俺を見上げた。


クソッ…。
そんな目で見んなよ…。


「見てんじゃねぇよ。気色悪ィ」


また思ってもねぇ言葉を言った。


「あ…ごめんなさい…」


言いながら歩き出した宇理。


「オイ」



俺が呼び止めると
宇理の身体がビクッとなった。

「は…はい…」


……そんなに怖ぇなら…



「二度と来んな」



宇理は固まったまま震えた声で
言った。


「わかっ…た…」


言ったと同時に走って行った。



「……言いなりかよ…」

その姿を見たがら呟いた。


宇理は俺に思ってる事を言わない。

従ってばっか。


宇理の笑顔が見たい…

宇理が最後に

俺に笑いかけたのは

5年も前の事…。


それを壊したのも俺。


兄妹の関係を壊せない。

もし両想いになれたとしても

最後には必ず別れがある…

それに宇理は俺を
嫌ってるだろうし。         

冷たくしてるのが1番良い…。


思いながら教室に戻った。         


                  

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