《MUMEI》
妹の本音
                  
「はぁ…。」


放課後になり

帰ろうと階段を降りていると

頭に思い浮かぶのは兄の事。

お兄ちゃんはモテるから仕方ない

とは思ってたけど


実際にあんな場面に遭遇してしまうと

もう泣かずにはいられない。


泣いてばっかりの自分…。

「弱いなぁ…私…」


ドンッ

「きゃ!?」


いきなりの振動で身体が前のめりになって


ドタドタ…ドサ…


階段から落ちたと共に
意識を手放した。





――あぁ…。


きっとバチが当たったんだ…。


お兄ちゃんを好きになったから。


いつまでも泣いてばかりだから。


もう諦めなきゃいけないよね…。


泣かない様に頑張らなきゃ……



「ん……」


目が覚めると視界の先には白い天井。

手に違和感を感じ、見ると


「―!!」


驚きで口が開く。



なんで………


なんでお兄ちゃんが……

私の手を握ってんの……!?



兄はイスに座ったまま私の左手を握りながら

ベッドにもたれかかって眠っていた。



どうしよ…

どうすればいいの!?


お兄ちゃん起きてくれない…


お兄ちゃんが近くに居るだけで

あり得ないくらい
ドキドキしてる自分。

左手が熱い。


やっぱり好き…

好きだよ…お兄ちゃん…。

でも


「……冷たいお兄ちゃんなんか…
嫌いなんだから…」


冷たい目で冷たい言葉を言われた場面を思い出した。

お兄ちゃんが今起きたら
また何か言われるよね…

想像するだけで泣けてきた。


「…っ…」

涙をこらえると鼻水がズビッとなった。



「泣くな」



えっ…

「お兄…ちゃん…」


お兄ちゃんは身体を起こして私を見た。


「体大丈夫か?」


あのお兄ちゃんが

私を心配してる…!?

兄が妹を心配してるだけなのに。

中学からお兄ちゃんに心配された事がなかった。


「うん…。ごめんなさい…」


嬉しい…。

でもお兄ちゃんの顔を
見ることが出来ない。


期待したらいけない…

また何か言われるかもしれない。

不安と期待が混じって気持ち悪い…

お兄ちゃんをチラッと見ると

目が合った。



「見んじゃねぇよ」



ほら…。

そんなに私が嫌いなら

こんな所まで来ないでよ…


「意味わかんないよ…っ」


初めてお兄ちゃんに本音を言う。

それだけでも

私からしたらかなり勇気がいる事だった。

でももう止められない。


「そんなに私が嫌いなら…
なんで来るの!?いつもみたいに放っとけばいいじゃんッ!!」


涙腺完全崩壊。

目からボロボロと涙が溢れた。

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