《MUMEI》

§§§§§§§§§§§クーデターの騒乱が、ひとまず鎮静化を見せた頃、さすがに憔悴(しょうすい)の影を顔に浮かべるゼウスの姿は、首都惑星のエメラルド・グリーンの海上に浮かぶ、ある
孤島を訪れていた。
そこで新政権の有力者達による、これからの天津神文明の行く末が話しあわれる予定であった。
だが、公(おおやけ)の場に姿を見せる前に、ゼウスの足が向かう先は、島の奥地に秘密めいてそそり立つ、地球の中世時代に見られるような外観の古城だった。
「開門!」
ゼウスのひと声で、武装した門番の操作により、巨大な鉄製の門扉が軋みながら開く。
地球とはまるで違う花々が咲き乱れる庭を横ぎり、城の扉をくぐると、わらわらと集まって来る
召し使い達の手を、
「よい!しばらく俺に構うな!」と振り払い、二階へ続く階段を駆け上がる。
幾つも並ぶ扉の前を通り過ぎ、ある部屋の前に佇むと、珍しく端正な顔に緊張を浮かべながら扉をノックする。
「母上。全て滞(とどこお)りなく使命を果たし、ゼウス帰郷いたしました」
「お入り・・・・」
物憂げな女の声が扉の外へ漏れるのを聞くと、ゼウスは部屋に足を踏み入れる。
豪奢な部屋の隅で、ゼウスの母(?)ガイアが
湯舟に浸かり、眼を閉じて侍女に長い黒髪を洗わせている。
ゼウスは毛足の長い絨毯を踏んで、湯舟に近ずいていく。
母と呼ぶには余りに若々しい、姉と呼んでも不自然では無い、みずみずしい輝きを持つ白い女体が、お湯の下で揺らめいている。
ゼウスが目配せすると、
侍女が下がり、その代わりのようにゼウスが髪をゆっくり洗い始める。
それに気付いてるのかどうか、表情からは窺わせず、ガイアは鼻筋の通った美貌を仰向けたまま、うっとりと眼を閉じ、息子の手に全てを委ねた。湯の中から豊かな乳房が浮かび上がると、玉虫のように光る水滴が、その白い肌の表面を滑り落ちていった。
髪を洗うゼウスの手が、
その延長のようにごく自然な動きで、その豊かな乳房の上へ伸びていくと、ぎゅっと指先を食い込ませて握りしめる。
「ああ・・・・ゼウス・・・・いけない子ね。
侍女が見ているわ」
ばら色の唇が開き白い歯並をのぞかせた。
「決して嫌いではありますまい・・・・」
そううそぶく息子を、霞のかかったような眼をわずかに開き見上げると、
ガイアは背後の息子に唇を差し出す。
ふたつの唇がゆっくり重なると、舌が戯れるようにぬらぬらと絡みあう。その間もゼウスの手はねっとりとした手付きで、豊かな乳房を揉みしだいている。
紅(べに)を塗ったように紅い乳頭が、すでに硬くそそり立ち、もてあそぶ掌の間で跳ね踊った。
ぴちゃり・・・・。
水音が立ち、侍女の見守る前で、ガイアの白い肌が、湯と官能による上気でゆっくり桜色に染まっていく・・・・。

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